2025.01.01
予定よりは遅く起き、手近な身支度だけを済ませて初詣に出かける。ねむたい頭を外の冷たい空気を吸って起こす。まだ外に人はあまりおらず、いつもと違う方向から陽がさしていた。小学校、通り、軒先。混み始める前に列に並び、少しだけ手持ち無沙汰な感じで待って参拝。お焚き上げの場所がまだ開いていなくてまた夕方ごろにこようかなと考えていたら、お参りが終わったタイミングでちょうど受付を開始してくれてラッキーだった。寝坊が転じた。おみくじは吉、大吉以降どの順番かいまだに覚えられない。家に帰り残り物で朝ごはんを食べ、洗濯を2回まわし、やりたいことを書き出す。
早起きしたからか随分と眠たくなってもう一度ベッドに潜り込んで深く眠った。起きてもすっきりせずぼやぼやと暗い部屋にいたら、銭湯へ行こう!と急に思い立って、その勢いでスーパーに行くことも決めた。
こうやって思い立っていく銭湯は西荻窪の天狗湯。コインロッカー用の小銭入れだけを持って自転車を漕ぐ。他の持ち物はいらない(最悪小銭を忘れても受付に困り顔で伝えたら下足箱の鍵と引き換えに100円玉を貸してくれる、おのれの靴が人質ってわけ)。入浴代とレンタルタオル(大)で650円、今日は初湯で賑わってるな。天狗湯はぬる〜いお湯とあつ〜いお湯、それからキンキンの水風呂があるのがお気に入り。まずは身体をざーっと洗って、ぬる〜いお湯に浸かる。天狗湯のぬる〜いお湯はミルク風呂になっていて、さむくはならないギリギリのところで本当にぬるい。できるだけ力を抜くように首まで浸かる。一回休憩、次は中くらいの温度の泡がボコボコ出ているお湯に浸かる。ここはさっとで大丈夫、もう一回休憩。ここまで大体10分、徐々にのぼせてきているような気もするけれど合間の休憩で少しだけ呼吸を取り戻す。最後にあつ〜いお湯に頑張ってはいる。のぼせる一歩手前、10、9、8、7、6、5、4、3、2、、、身体は油断しているのでここからもう一回10、9、8、、、もう本当に無理!の直前で隣にある水風呂へダイブ!ここまで徐々に積み重ねてこもった身体の熱を一気に冷まします。ふ〜。じわじわと指先に血液が巡っているのがわかってくる。寒くなる前に上がって、カランに腰掛け。もうこのとき何も考えられなくなっていたら成功。家でやり残した仕事のことも、このあと食べようと思っていたごはんのことも、やらかしてごめんしたミスも、明日の自分のことも、なーんにも考えられないまま、カランに座ってただ目の前の鏡に映る自分の輪郭をぼんやりと眺めている時間。隣に人が来ても移動する気力すら湧かず、ただじっと動かずにいる。いつだって銭湯は天井が高くていいね。2分10円のドライヤーでささっと髪を乾かして、近くのコンビニで150円のアイスを買う。ゆっくりと暗くなる街を、のろのろ運転の自転車でぷらぷら移動します。計810円のリフレッシュ、さいこー。
つくろうと思っていたご飯はうっかり銭湯で洗い流して忘れちゃったので、適当に見繕って帰宅。もうなにもできません!と宣言して早めに眠る。
2025.01.02
昨日買いだめた食材たちを頭の中でぐるぐるパズルして一旦紙に書き出し、いざ、という気持ちでキッチンへ。昼前11時。朝ごはんは食べず、掃除と洗濯だけを済ませ、いそいそと取り掛かります。転蓬のメニュー撮影のために作りつつ、その後に待ち受けるお料理バトル(?)の時間に向けて大きめの下準備を。桃と梨の果実酒は半端な分量になっていたので容器を移し替え、中の果実を取り出す(ジャム、ドライフルーツ、パウンドケーキへ)。つつがなく進行し、3時間程度でコース料理は完成。窓から差し込む陽の光にピースサインを送りつつ、写真を撮る。お腹いっぱいでひと段落して、やり切った〜という気持ちでベッドへごろん。間違えて昼寝。でも大丈夫、今日は午前中から動き始めたのでまだ16時。第二陣。おせちの代わりにお正月っぽい食べ物をと買い込んでいた食材たちを物色し、一つずつ丁寧に下処理する。コースより簡単な料理たちに、さっさと品数が増えていき、気づいたら1日で15品目くらいつくってた。やりすぎじゃない?せっせとつくった料理をちょっとずつとりわけ、晩ごはんを食べながら母とテレビ電話。おばあちゃんたちがごはんを食べに来ていたようで、久しぶり〜と画面越しに手を振る。おばあちゃんはパーキンソン病を患っていて、その治療の一環で最近たばこを吸い始めたらしい。80過ぎの喫煙者、いかすぜ。小一時間くらい電話して、食器類の片付け。さあまだまだ第三陣。浸水していた餅米をせいろに移し、タコといくつかのスパイスと一緒に蒸す。パウンドケーキの生地をつくり、朝のうちに取り分けておいた果実をばらまきオーブンへ。焼いてる40分の間に洗濯物をたたみ、お風呂。髪を乾かし終えたらちょうど焼き上がりの音がして、せいろの火も止めた。どちらもまずまずの出来で、本日のお料理バトルはこれにて終了〜。食べきれないほどの料理が冷蔵庫をぱんぱんにしていて、この光景に代えられる喜びはいまのところ見つかってない。
2025.01.03
恵比寿駅へ。お正月の三ヶ日は無料になっていると聞いたのは昨年末で東京都写真美術館の展示を見にいく。アレック・ソス『部屋についての部屋』、6つの部屋として分けられていた展示の構成がとてもよく、ただ時代やジャンルで切り取られただけでもない作家のタッチ(写真の場合はショット?)がよく見えた。3番目の部屋の『Dog Days』『broken manual』の写真、5番目の部屋のフライヤーにも使われていたポートレイトがとても印象に残っている。画面や書籍ではないとても大きなサイズで写真をみる体験はとてもよかった。同時に開催していた日本の写真家5名のコレクションでは、金川晋吾の『father』のうち好きなショットを見られたこともよかった。他に紹介されていた作家も、グループ展の中でのプレゼンテーションの仕方がとてもよかった。
やはり今日は体調がだめかもしれないというのでそそくさと帰宅、ベッドを出し横にした。こんこんと眠り続ける横で、少ない明かりのなかちまちまと仕事を進める。度々目を覚ます度に声をかけ、また数分で寝息が聞こえるのを聞く。去年、体調を崩した人に何度か作ったスープをさっとつくり食べられるように準備しておく。強力なユンケル。ちょうどインターネットで、食べられないかもという人にあたたかいものをつくることは祈りに近いという書き込みを見つけ、似たような体験をしている人がいるのだとぼんやりと思った。暗がりの中でただ待ち続ける時間、お茶を淹れ息を吐く、ぱらぱらとめくる頁、静かなタイピング、ひとつずつ整え眠りについた。
2025.01.04
朝は起きずベッドの上でもぞもぞとする時間を過ごす。隣で寝ている様子を気にしながら、ついさっきまで見ていた悪夢のことを思い出す。悪夢には決まって知らない人と知っている人が出てきて、何かに閉じ込められていたり追いかけられたりする。今日は知らない部屋で知っている人に狙われ、知らない船の上で知らない人と逃げる謎の夢を見た。べつに悪夢によって睡眠が害されることはないので、大きな画面で見るSFのような気持ちで楽しんでいる。
昨日よりは回復しているようで、作っていたケーキと残り物のスープを飲んでいた。ぼくが食み飲み込むことができないケーキを、甘い、美味しいといってパクパク食べている。ただぼんやりとした時間をすごし、昨日から数えて18時間くらい横になっていたねと笑い、買い物ついでに気分転換をと家の周りをぐるりと一周散歩した。ふたりとも見逃して、昨年末に見ようと言っていたのも眠気で達成できずにいた三宅唱『夜明けのすべて』をパソコンで見る。ベッドに横になり、お菓子とお茶を広げて、徐々に暗くなる部屋の中で見る。あまりにもよかったし、今このタイミングで見られてよかったと思う。放心状態を落ち着かせ、夜ご飯はサイゼリヤへ。何も考えずたくさん注文した料理が二人がけのテーブルには乗り切らず、店員さんを戸惑わせてしまい、一度受け取ります!と大きな声を出す。空いた皿をどこに置こうか迷っていたら隣の男性がテーブルに置いていいですよと声をかけてくれて、大丈夫ですよ!とまた大きな声を出してしまう。男の人は一人で間違い探しをやっていた。
家に戻り別れを惜しみつつ、夜はまた仕事をする。締め切りが刻々と迫っているので、推進力と慎重さを抱えて文章を書く。
2025.01.05
今日が締め切りなので頭はほとんどそのことに置いてとっぷり時間を使う。文章を書き進め、一度頭をリセットし読み直す、もう一度書き替える。ほとんど運動のようなそれを繰り返して大きななにかを捉えようとしている時間はもうここ2年の間に何度も訪れていて、今が一番調子がいいと思う。昼は近所でお茶をしてまぶしい井の頭公園を散歩してリセット、夜は日高屋でチャーハンとレバニラと餃子3個を食べてお腹いっぱいにしてリセット。生活もだいぶ上手さを取り戻しつつある。お風呂に入った後も文章と睨めっこしつづけた。詰めの甘さを指摘された去年、という呪いを頭のなかで反芻し何度も何度も見直し、細かく修正を続けた。でもこれは一人ではやりきれなかっただろうな。締切の一時間前まで粘って無事提出した。ほとんど放心状態で眠る。
2025.01.06
最近寝ている間に歯を強く噛み締めているみたい。疲れか、生えそろってきている親知らずのせいか、噛み締めによって歯がグググっと広がってる気がして顎を何度か動かす。久しぶりの雨、12月から年末年始にかけて曇った日はあったけどこんなにしっかり降ったのは数ヶ月ぶりのような気がする。バストリオの新作の稽古。少し早めに家を出て、東京の東側へ向けて移動する。電車の中で、平倉圭『かたちは思考する』を読み進める。ちょうどマティスについての分析の章で、バストリオが志向していることと共通する部分が多くあるように見える、平倉さんにみにきてもらうときっといいことがあるだろうと思った。散歩をしてつくる。自分の声の出し方、振る舞い、頭の状態をみて徐々に調子を取り戻しているような気がする。いつもとは違う・新しい・普段やらないような部分に触れようと思ってトライするつもりで時間を過ごし、写真を共有した時にじぶんっぽい写真だと言われて、そうだよなと思う。別にそんなにすぐにはうまくはいかない。二個目の触りだけ話して、じぶんにとっていま一番考えていること/流れ込んできていることを考える時間。個別具体の物を探してみてもあまり思いつかず、家を丸ごと持っていきたいような気持ちになったけれど数日空くのでもうすこしだけ考える。お腹の調子があまりよくない。夜は仕事をせずにぱっと食べて風呂に入って眠る。濡れたコートを干す。
2025.01.07
朝から仕事を進める。一つ一つへの集中・チューニングが割とうまく行ってサクサク進む。進まないこともある。話していたら明日偶然時間が合いそうとのことだったのでデニーズで集合する約束。インフルエンザの隔離期間が終わったらしく、年が変わってから初めて会う。夜は渋谷にタバコを買いに出かけ、ドトールに行って大きなコーヒーを頼んで作業を進める。夜になったら仕事はしないというサイクルができつつあるけれど明日でそれは総崩れです。集合してお茶をしながら、スープストックトーキョーのメニューをみたり、アオハタのラインナップを見たりした。ジャムとコンポートとコンフィチュールの違いを調べるなど。PCの掃除用に無水エタノールとエアダスター、アオハタの黒胡麻スプレッドをその場で買う。夜は手元と首元がぼろぼろになった青のナイキのトレーナーを縫って補修する。先輩に5年前くらいにもらった古着だったけれど気に入って長く使っている。寿命を伸ばすような時間、全く音がしない深夜。
2025.01.08
朝起きれず、洗濯を回し、最後の餅2個を揚げ焼きにして食べる。一つは砂糖酢醤油、もう一つは海苔を巻いて磯部焼きにする。作文をしてから出かけるつもりがなかなか思いつかず、うろうろと作業をしながら考えている。ふと、襖がいらないかもと思って外して、キッチンと部屋を区切っているガラスの扉を襖の部分にはめる。ピッタリ。襖のやり場に困って、養生したり、いろんなところに動かしたりしてみて置き場を探すけどタイムアップ。テキストも最後までは書ききれなかった。南阿佐ヶ谷のデニーズに行って、溜まっていたり迷っていた作業を3人で確認しながら方針を決める。北海道の人たちの話を聞いたりして夕方ごろに解散。今日は夜まで仕事だ。オンタイムで始まる前にカップラーメンと玄米ご飯、冷凍餃子をかきこみ、位置を迷っていた襖を良いところに収めた。
2025.01.09
今日は三ノ輪駅の近くで稽古。朝うまく起きれず、やろうと思っていたことを放置して出かける。まずは無印良品に行って日用品の買い物、秋葉原の乗り換えのタイミングで郵便局へ行く。遅刻するかもしれないなとぼんやり考えながらバタバタと向かっていたけれど、駅のホームにあった牛乳を見つけてちゃんと買う。バストリオ新作の稽古。自分の調子が良くないのか、人の声や振る舞いに敏感に反応してしまう。夜の散歩は情報が限られていて落ち着いた。三谷酒場でスパイスケーキを手に入れる。寒い中電車を乗り継ぎ帰宅。いくつか頼まれていた仕事を進め、遅い時間に眠った。
2025.01.10
昼にチケット発売があったので早起きして作業をするぞと思っていたけれど無事寝坊する。届いていた連絡やテキストを確認してチケットページに流し込み、関係者に連絡をする。洗濯を2回まわし、こまごまと作業を進める。今日はいい天気だ。これから日記をつけてくださいという連絡と、毎日何枚かの東京の写真を撮ってくださいという連絡。朝ちゃんと目を覚まして少し散歩をする習慣にしてもいいな、とぼんやり思った。気づいたら時間になっていて慌てて表参道へ向かう。スパイラルホールの中を見せてもらって、施設の職員の人と小一時間くらい話をした。そのまま鷺ノ宮駅へ行き、すきまの時間でラーメンを食べてバストリオハウスへ。最近定例化したミーティングはいつも遅い時間までかかってしまうのでちゃんと議題の整理と準備を進めてから臨む。サクサクと共有、決めることを決めて90分くらいで終わった。それぞれの生活のタイミングを合わせるむずかしさを感じているので、こうやって集まれる時間がいいものになると普通に嬉しい。3日前まで開けていたWebのエディターが旧にサービス終了していて更新ができなくなった。海外のものを使っているので一気に不安になる。家に帰って、そういえばWebももういらないのかもしれないなと思ってサポートにページを削除したいという連絡と、ドメイン・利用料の扱いについて確認の連絡をする。DeepLに突っ込んでそのまま送ったので変な英語かもしれないけどきっとまあなんとかなる。Webに掲載してテキストデータをあまり保存していなかったことに気づいてWordファイルに落とし込む(というのもWebはテキストでさえも画像差し込みで作っていた)。決済される前にWebのページを早いところ削除して、転蓬のためのstoresを開設する。
2025.01.11
もう一度Webサイトについて問い合わせようと思ってブランクになったページをみていたら、白背景に白文字のリンクが出てきて急にアクセスできた。Webを閉じようかと思っていたけどやっぱりかわいいし、残っているならと継続して使う。
今日は10時から髪を染めに美容室へ行く。出かける直前の一時間で洗濯を回し布団のシーツを干した。ハイライトにするために集中して作業する美容師さんに「頭のこと立体的に捉えてるんですか?」とは聞けなかった。成人式が近いので、3時間座っているあいだ変わるがわる染めたりパーマを当てたりする男の子たちがくる。自分も成人式だと思われただろうな、という髪になって帰宅。電話、うまくいかなかった。作業、手前の雑務に追われてなかなか作業が減っていかないけど一つずつやっていくしかない。
夜は渋谷のエリックサウスに晩ごはんを食べに出かける。今日2回目の渋谷、道中で風景を撮る。今日はストリート。エリックサウスは選ぶのに困ってぼくたちより後に入った人の方が先に食べていた。小麦の匂い、スパイスの辛さ、薄味のワイン。どれもこれも美味しくお腹いっぱいになって外に出る。夜風に当たってもまったく空腹にならない。家に帰り、一度も座ることなくお風呂に入り、そのまま早いところ眠った。
2025.01.12
12時間眠った。曇りでまさしく冬の気温、そろそろ電気ストーブを出したほうがいい。サンドイッチを作ってたべ、洗濯をまわす。昨日雑務を済ませていたのでようやく本腰を入れて進めようと思っていたことを進める。夕方に外に出かけ、本当に寒く辛い気持ちになりながら下北沢へ。バインミーを食べ小腹を満たし、山二つのライブに行く。演劇は数日間やるからだれかいるかもなくらいの心もちだけど、ライブは1日のことが多いから絶対に誰かと会うなという不思議な気持ちになる。下北沢アレイホールはとても良い場所で、ライブアレンジもとても心地よく、2時間あっという間だった。とても楽しかったし、とても楽しそうなのが良かった。帰りがけにお腹が空いて、成城石井とファミリーマートに寄ってカップ麺とお酒を買う。東京の風景の写真を撮り忘れていたので、近所の大きな駐輪場で一枚だけ。明日は早起き。
2025.01.13
ちゃんと早起きし、洗濯物をまわして出かける。今日はアトリエ春風舎で仕込み手伝い。今日も大変だろうと思っていたけれど物量がめちゃくちゃ少なく、ほんとうにこんなんで良いのかと思えるくらい楽な仕事だった。夜に一時間だけ打ち合わせのために現場を抜けてガストへ。また戻ったらほとんど終わっていて、ケータイをいじりながら時間を過ごす。早めに切り上がり帰宅。下北沢へ行ってお茶。さまざまにある関係性と、名前のつけようのない時間。とても寒い夜風はあんまり似合わないなと思った。薦めなきゃいけない仕事をもう一度確認して、今日の東京の写真を撮り忘れたことにまた気づく。なかなかこのモードを継続することが難しいけれど、『ブルーピリオド』で出てくる同様の課題とそのコマ割りのスケッチを思い起こして駆動する部分がある。仕事と予定をダブルブッキングしてしまったことを思い出しその連絡をしなきゃと思い、もう一つこころに引っかかっていることの連絡をちまちまと進める。ホットミルクをのんで、暗い部屋で時間をすごし、明日もまた早起きなので早めに眠れると良い。
2025.01.14
撮影のために早起き。加入してから長らく更新されていなかったプロフィール写真を撮るために柴又へ行く。一年半前、この辺りを長く散歩したので見たことがある景色や、匂い、色、風の強さなど色々と思い出しながら歩く。公園に荷物を置きそれぞれの撮影。数枚シャッターを押したらもうOKが出て、きっとうまくいったんだろうと思う。そのまま稽古のために川を越えて青砥へ。東京の東側だなという空気を感じながらずっと歩く。浅草に住んでいたのはもう2年以上前で、こちら側に来るたびに懐かしい気持ちになる。いずれはこちら側にと思っていた気持ちはすっかりなくなってしまった。たくさん歩いたので左の足の裏が突っ張ったように痛くなりながら帰宅。長いこと外に出ていたのでヘロヘロになりながら、帰り道のセブンでカップ麺とビールを買い、霜降り明星のオールナイトニッポン年始の一発目の回を聞きながら家でちびちび飲む。さっと風呂に入って眠る。
2025.01.15
よく寝た。ここ数日の習慣で8時ごろに目が覚めたけれどそこからもう一度浅く眠り、再び目を開けてもしばらく横になって携帯をダラダラと見ていた。キッチンの掃除と1日溜めていた洗濯物をまわす。ポストに溜まっていたチラシを回収して、未開封だった段ボールを小さくたたむ。吸い殻、生ゴミを一つの袋にまとめる。日用品の買い出しのためだけに30分ほど出かけ、一週間くらい在庫がきれていた市指定のゴミ袋を買う。近くのまいばすけっとにはゴミ袋がないことが多いので2袋まとめて買う。今日は春の陽気みたいな温度と空気なので家に戻ってからエアコンを弱め、夜出かけるために別の服に着替えて仕事を進めた。
夕方から外へ。今年から新しく始まる仕事のための打ち合わせに向かう。総武線に乗っていたら信濃町あたりで急に止まってしまい駅のホームにブザーが鳴り響いている。アナウンスもなく、次々と人が電車に乗ってきて一瞬で満員になった。15分ほどしたら再び出発、安全確認だったらしい。移動だけでぐったりして市ヶ谷へ。いろいろと情報を共有してもらいながらこれからの計画などを聞く。もう一つひとつのプロジェクト単位だけで捉えて手を動かすことは難しく、いつも抽象的な、あるいはとても大きなことが頭を掠めている。久しぶりに同じ電車に乗って帰宅し、昨年末に起きた出来事についておもしろみたっぷりに伝え解散。夜は寒かったので早めに眠った。
2025.01.16
気づいたら朝。停戦のニュース。家のことをそこそこに済ませ稽古へ行く。今日は4時間だったのでさっと終わった。帰りはみんなで美味しい中華に行こうと言っていたけど定休日、お店は一軒目酒場になったので自分は入らず帰宅した。西荻窪駅で降りて、ついにオオゼキへ。はじめてのレイアウトのスーパーに戸惑いながらゆっくり物色した。終わりかけのジャガイモでモダン(?)ポテトサラダ、具沢山すぎる豚汁、きゅうりとキムチを和えたもの、イワシの梅煮、米、納豆。焦げついた鍋を重曹できれいにし、今日の稽古で腕に書いた油性マジックをお風呂で洗い流す。あしたは朝から印刷に行く。
2025.01.17
朝から印刷のために電車を乗り継ぐ。知らない街。たくさんの印刷物が広がっている。サンプルを見ながら紙とインクの色を決め、データの最終調整をして送る。次々と出てくる。あっという間に終わり。家に帰り加工の作業をすすめ、夕方には折り込みのために劇場へ行く。今日1日でいったい何枚の紙を扱っているのだろう。そのままヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』をみる。他ではあまり見たことがない形になっていたし、何より気合いの入り方が集大成ということを表していて終始好感を持ってみた。だけど、音楽劇としてそのスコアによる抑制があまりにも過度で、それを乗りこなす俳優の仕事はすごいけれど、テキストとその速度にも全く乗れずだった。俳優全員がピンマイクをつけていて、音の届き方にムラがまったくないのも勿体無いと感じた。ここまでクオリティが高いのにあまり面白くなかった。家に帰りレシピの作業の続きをして3時に眠る。肩が凝った。
2025.01.18
今日は休みなのでのんびりしようと思っていたけれど、発注していた表紙が思いのほか早く納品されたのでレシピの製本作業を進める。裏番組では洗濯物をオキシ漬けする。やるたびに汚れる液体を見てぎょっとする。冬場は洗濯物が乾かないけれどトレーナーなどを回したい欲求もあるのでそのせめぎ合い。レシピの製本を着々と進め、夕方にはすべて完成してしまった。色がとてもいいし、思っていたよりかわいく仕上がったので満足。明日物撮りをしてオンラインストアの開設を進める。凝った身体をどうにかしようと思って夕方に銭湯へ行く。だいぶん力が抜けたまま残り物で夜ご飯を食べ、再び外へ出かける。なんとなく飲みたい気持ちだなと思ってふらふら散歩をする。風が吹いておらず寒くない。吉祥寺に来てからこんな時間はあまりなかったような気がして飲み屋がある場所を外れて散歩し、いくつかの店を覗き、街の写真を撮る。結局今日はせっかくだしと、パン屋へ。立ち飲みでワインを二杯飲んだ。好きなワインの銘柄を溜めておくメモをつくる。明かりの数だけ人がいるというのはうそ。
2025.01.19
よく寝てすっきり起きた。ここ数日フジテレビが炎上していて、キー局と呼ばれるものがなくなるかもしれないという情報。テレビはほとんど見ていない。朝からレシピの写真を撮影して、オンラインで販売できるように導線を整えたりした。いつ公開しようかとそわそわしていたけれどあんまり意味がない気がしたのでお茶をしながら夕方ごろにえいっと投稿。とても可愛くできたし気に入っているけれど、あんまり反応はないし、思っていたほど注文は入らなくてなんだか悲しい気持ちもしつつ、まあそんなもんかという気もする。レシピなんて買う習慣がある人の方が少ないわな。渋谷から小竹向原に行き、照明のばらし増員の仕事。あっという間に仕込んだものだったので、あっという間よりもっと短い(何ていう?)時間で終了。会場でのピザパーティーに少しだけ混ざって帰宅。今夜もコンビニで惣菜を買って、残っていた味噌汁と一緒に食べる。
2025.01.20
この週末はレシピのことばかりやっていたのでそろそろ働くかという気持ちになって仕事を進める。本を読もうと思っていた時間はそわそわしてしまってダメだった。稽古の前に早めに稽古場の近くに行き広報の打ち合わせ。高円寺茶房の少し狭い席に3人集まって話す。なにができるか、なにをやるべきか、人員のリソースとアイデアの天秤。セブンのルーロー饅は八角がよく効いていてとてもおいしかった。たこ焼きのソースの匂いが充満している。ぐっと集中して稽古して解散。途中から来た人が雨に濡れていて、土砂降りだよと伝えられ干してきたシーツのことを思う。お腹がとても空いていたので久しぶりにラーメン屋で食べ帰宅。すっかりミーティングがあったことをすっぽかしていて謝罪しながら終わり頃に滑り込む。レシピの発送の準備をして、明日の稽古場に持って行くものも準備する。あんまり眠たくないし、外の空気は冷たいけれどほのかに湿気で暖かさもあるので羽織はせずコンビニへ向かう。レシピ撮影のために切ったミモザを花瓶に生けていてとてもいい。葉っぱのテクスチャがとても気に入っている植物で、右足の踵付近にいるミモザの線を入れてよかったなと薄暗い部屋でぼんやり思う。風呂に入って眠る。
2025.01.21
思い出しながら書いている。吉祥寺で稽古だった。初めて行く場所で、住んでいてもまだまだ知らないところがある、そしてもっと遠くにはもっとたくさんの行ったことがない場所があるという当たり前のことを思う。街を歩きながらパン屋を見つけて春菊のパン(380円)を買う、人のペースに合わせて歩いていてこうやって街を見ることができるという、大義やシステム、文脈とかからかけ離れた純粋な楽しさを感じる。少しサボっていた苔への水やりを毎日やるようになってから緑色が元に戻ってきて植物の時間のことも考える。夜は失職中の繋ぎで受けた仕事。暗い部屋でパソコンに向かいながら細かく文字の修正を少しだけ進め、首が固まってきたのですんなり諦めて眠る。
2025.01.22
よく眠り起きる。昼から国立で打ち合わせがあったので中央線の、いつもとは反対方向の電車に乗る。国立駅は初めて降りたけれどかなり大きな駅だった。駅前も、きれいに栄えていてあまり知らない空気だった。テキパキと話を済ませ引き継ぎ、バスに乗り駅前の喫茶店へ移動して今月中から取り掛かる冊子のデザインについて話す。比較的普通の冊子を想定していたけれど集まってきた原稿を見て、バラバラの小冊子を一つの本としてまとめるのがいいのではないかという楽しいアイデア。作業は大変になるだろうけれど、冊子のテーマともあっているし、何より自分が楽しめそうなのでその方針を決め残りの原稿を待つ。
そのまま高円寺へ。七つ森へいき、久しぶりに会う人とお茶をする。アイスココアとホットココアだけで粘りながら、ここ数ヶ月で何が起こっていたか、慣れたように近況報告をして笑った。空中を掴むような言葉で話しながら距離をもう一度はかり直す時間、ふと飛び越えるようにもっともわかりやすい言葉で話す瞬間。また近いうちに会うというぼんやりとした約束だけをして解散。夜の打ち合わせの時間が迫ってきていたので日高屋でチャーハンとレバニラ(単品のセット、いい話を聞いてからこの組み合わせを気に入っている)を頼んで帰宅。あと30分で打ち合わせが始まるというのに洗濯物を取り込み、お風呂にまで入った。暗い部屋でzoomを繋ぐとあまりにも自分の顔が暗くて急いでスマホのライトを照らし、むしろ眩しい中で打ち合わせをする。昨日の字幕作業の続きをほとんど終わらせて明日確認したら送ろうと思いながら一瞬で眠る。
2025.01.23
呼吸が止まっているみたいに起きる。午前に約束が一つあったので寝坊していないか確認して、まだまだ余裕があったので布団で横になりながらスマホを眺める。SNSとYouTubeの巡回、そろそろWebだけにした方がいいのではないかと思うくらいSNSはつまらなくなってきた。
下北沢へ行き、トロワ・シャンブルでお茶をする。一人は体調が悪くなって連絡が取れず二人で話す。お願いしたいことを伝え喜んでもらえてよかった。それから最近の様子、とくに仕事のことと体調のことを聞いて、たくさん横道にそれながら盛り上がる。最近作ったというフリーペーパーを一枚もらった。
一度家に帰り再び外へ。三鷹と西荻窪で一件ずつ予定があったので自転車を漕ぐ。最近の日中は陽がさしてとてもあたたかい。出かける前に急に思いついて梨のジャムを作り、レシピを一冊持って出かける。西荻窪では川村夫妻の展示が今日から始まっていて、差し入れにジャムと、鹿肉のお礼にレシピを渡す。家に帰ると、建物に沈む前の陽が部屋の中に差し込んでいてぼんやり疲れた身体を温める。細かい作業をしていると眠くなってきて、夕方からまた出かけるんだということを思い出しながら目を瞑る。こういう時本を読み始められるといいのだけど。近所の居酒屋で人と会い飲み、早めに眠った。
2025.01.24
緊張する予定があったのでまた呼吸が止まったみたいになって起きる。遅刻していないか確認して集合時間を30分遅らせようという連絡があったので呼吸が整うまで横になる。掃除も洗濯も諦めて頭の中をぐるぐるとシミュレーションする。タバコを一本だけ吸い青山一丁目へ。地下で電波が入らないことも含めてとてもよい喫茶店だった。長い時間、紆余曲折しながら話をし、赤坂の神社に初詣に行くのについていく。東京の都会の、高い建物ばかり並ぶ中に、同じように派手やかにいる神社。自分が好きなタイプではなかったけれど一緒にお参りをして今年のいろいろな勝負について遠くを向いた。レシピの発送、買い出し、最近元気がないので春先にまた会いましょうという連絡。いろいろな関係性が重なっている中で、なんでレシピを作ったのと聞かれて、もともとやろうと思っていたんですと答えたけれど、誰かとの受け渡しの形の一つなのだと思った。ご飯を振る舞うこと(ぼくは人にご飯を食べさせることをよく、その人の身体を通すと表現している)も同様だし、舞台に立つことも、制作をやることもそう。別に何かの緩衝材として間に立つということではない、その受け渡しのこと。
今日はオオゼキの換金デーだったので買い物に行き、使ったお金とほぼ同額を現金に換えた。キッシュとビーフシチュー、ところどころレシピを崩しながらどんどん仕上げていく。手つきが良くなったな。
2025.01.25
よく寝た。キッシュとビーフシチューの残りを食べて打ち合わせを一件済ませる。今日は遠くへ行くので早めに家を出てるために荷物をまとめる。稽古、くたくたになって帰宅。
2025.01.26
寝過ぎて遅刻。昼からは栃木に住む長崎の友達と会う。東京台湾、餃子のフルーツのタレが何を入れているか曖昧な味がしてとても良かった。道を歩き、友達が服を買うのを見て、お茶をして帰宅。夕方に島村楽器へ行き手続きをして、仕事を進めていると夜から遊ぶ連絡が来て吉祥寺のラウンドワンへ行く。京都以来のボウリング、なんとなく感覚が残っていて少しだけ上手になっていた。終電が来るまで遊び帰宅。くたくたになって眠った。
2025.01.27
遅刻。浅草へ行き照明の手伝いをする。夜遅くに帰り、前々から薦められていた『チ。—地球の運動について—』を一気に見る。ビーフシチューは贅沢なご馳走。ビールを飲みながらちまちまと過ごす。
2025.01.28
おはようは夜でも大丈夫。
2025.01.29
朝ごはんに昨晩作っていたキッシュを半分に切り分けて食べた。午前中は仕事をして、午後から仕込み。買い出しはすでに済ませていたので手際よく一つずつタスクを消化していく。料理をしているときはやはり無心に近いような気もするし、ものすごく頭の中を血が巡っているような気もする。提供するイメージにはつねに余白があって、そこで思いついたアイデアをそのまま直通でやれる楽しさがある。あっけなく終え、島村楽器吉祥寺パルコ店から電話が来ていたので機材を受け取りに行く。ついでに切らしていた米油と、手ごろな器を2つ買いに行く。食器を長いこと見ていたら店員さんに「なにかお探しですか?」と声をかけられて、「あ、ゼリー状のものを固める手ごろなサイズの器を、、、」と妙に具体的に答えてしまった。燭台のようになっている器は希少らしく、小さいものは売っていなかった。入れるものの色を想像しながら青いプリントがされている、きっとこれは湯呑みを2つ買う。LOFTでトレーシングペーパー、無印良品でバッグインバッグと定規を買う。帰って、ものすごく小さいサイズにしたお品書きを切ったり貼ったりする。
夜は吉祥寺に飲みに行った。ほてる(漢字の変換がめんどくさい)という居酒屋に行き、しらすの卵とじ、鰯の海苔巻、揚げ茄子、ハムカツなど食べつつお酒を飲む。ここは割りもの系のお酒がかなり濃ゆいので薄めを頼む。さっと出て、くぐつ草にいきラムココアを飲みながら、親密な関係についてぽつぽつと話す。名前のつけられない、ともすれば腐れ縁とでも言われてしまいそうな間柄。もう躊躇することも、間違うこともないけれど、同じところをぐるぐるしていると言われて、そうだよねと納得する。同じことの繰り返し、同じ場所をなん度も書く、これは全然違うことだねとも。遅くならないうちに帰宅、もらったジッポにオイルを入れて火をつけると、100円ライターとは明らかに違う匂いがした。
2025.01.30
目覚め、キッシュを立ち食いした。あんまり時計を見てなかったけど意外とギリギリだと焦って残りの仕込みをする。今日は2回転します。昼は外にラーメンを食べに行った、全く苦しくなくぺろり。リレーする味、蓄積する重さ、液体に写し取られた味。今日はそんなに疲れなかったけれど後頭部がとても固まっている気がする。たくさんの連絡をした気がするけど一つ一つはあまり覚えていない。最近はちょっとずつ調子が戻ってきているような気がするけれど、一度焼き切れた脳内が回復するには結構時間がかかるんだなと、これもまたぼんやりと思う。なん度目かのおはよう、体調がなかなかよくならないらしいけれど、そんなに重たく心配していない自分もいる。こうやっていながらも時間はどんどん進んでいる。
2025.01.31
この辺は何もないかと思って俯いて歩く道。漫才は文字で読んでもおもろい。SNSでの執拗な批判。見た犬の報告。タバコの買い忘れ。誤認せず食べるための手続きと順序。深夜の渋谷にタバコを買いに行く。わけもなく街をぐるっと一周した。あちこちでいろんな言葉が聞こえる、サイレンを出していない救急車、酔い潰れている人、黄色い声と腰に回す手。
2025.02.01
全部落ちた、くやしい、悔しくないなら何もしないほうがましという思い。次につながるようにと新しくテキストを書き始めようとする。身体が膨張するような、ひどく理性的でその内側で激しく動悸がするような状態。2月になったので本を一冊と、飛行機のチケットを買った。3月に長崎へ帰る。ファミリーマートで月餅持ってスタート、八王子駅。八王子駅は意外と近かった。牧場、牛の目、羊の顔はおばあちゃんに似ている。ミモザの香りがする線香、バッティングセンター。水がない川の中を歩く。ハードオフをめぐる旅。たくさんのことを覚えているようだけど忘れている。帰りの電車で写真を送って、家の近くのバッティングセンターを探した。自転車で18分の表示。疲れたのだけは本当。
2025.02.04
2日と3日は日記を書けなかった。稽古場に行くのが楽しい気持ちとつらい気持ちが半分半分ある。進めても進めても終わらない作業、自分の意見を言うことの怖さ、おもしろくないものを作ってしまうこと、なにかを探られ試されているような間に耐えられない。嘘をつかないと言うことは、自分を守るための取り繕いもしないということ?
2025.03.13
ひさびさに日記を開いて書き出そうとしている。2日前の3月11日に飛行機に乗った。去年は年末年始に帰省し金沢での地震があった。道中、大きめの荷物を抱えて黙祷をしながら乗り物の中を運ばれていった。
2025.03.17
長崎最終日。連日あそびに出かけていたので今日はずっと家にいる。午前中にWi-Fiの解約を電話で済ませる。解約の理由には引っ越しとうそをついた。携帯の乗り換えやインターネット関連の手続きは東京にいるとなかなかやり出さないのでこのタイミングでできてよかった。食べ残したものをインターバル短く食べる。細々とした仕事を進め、ただぼんやりと過ごしていたら昼寝。起きたらすぐご飯を食べて、荷物をパッキングして、携帯の写真を削除する。空港へ向かう。バスの時間を見間違えていて、急遽母親の車で送ってもらう。21:05発の飛行機。やけに遅い時間にして疲れてしまうけれど窓の向こうにはのぼりかけで赤い月が見えた。飛行機が高度を上げるよりももっとはやい速度で月はのぼる。ダウンロードしていた霜降り明星のANNを聞きながら2時間弱を過ごす。終始見ていないR-1グランプリの話をしていた。一週間の長崎滞在は比較的仕事もしていたけど休んでいる体感で終えた。もうすぐ春が来る。漁火の灯り、真っ暗な場所パラパラと降らせた夜。
2025.03.23
日が沈みきってしまう直前の、ほんの数十分のあいだにだけおとずれる。強くオレンジの光によって全てが影に飲み込まれ、反射した空気に包まれていく、すべてにピントがそろっていく。
2025.03.24
新宿の喫茶店に閉店間際までいた。バッティングセンターはいつでも混み合っている。缶ビールを毎日開ける路上。大事なことと、大事だけど言わないことがある。
2025.03.25
朝から調理道具と食器類のメンテナンスをする。シンクにお湯を溜めてオキシクリーンを溶かし、ステンレス製の鍋やスプーンをドボドボ浸けていく。同時にガラスのコップ、ずっと使っていると汚いとまではいかないけど水垢や茶渋がどうしても目立ってしまうものを優先して別の桶でオキシ漬けする。しばらく経ったら全部を洗い流して、ステンレスはアルミたわしで擦ってピカピカになった。引っ越してから1年経ったあたりからずっと思っていた、コンロの五徳の焼き切りとこすり洗いもやってキッチンに一気にすーっとした空気が流れる。大部満足して仕事を進め、大きな山を越えて一気に気が抜ける。窓を開けた部屋に流れる夕方の風がとても気持ちよかった。暑くない日の夏の夕方みたいだった。本を読み進め、赤坂見附駅に向かいエリックサウスで晩ごはんを食べる。「おかわりマスバ」って言うよと言われた直後に厨房からその掛け声が聞こえてきて笑う。
2025.03.26
ひとしきり眠って京都へ行く支度をする。といっても携帯の充電と一回分の着替えを持つだけ。集合の時間を一時間間違えていたので、外で軽く済ませようと思っていた昼ごはんを家に切り替える。残っていたはとしの具材を雲呑の皮に包んで揚げる、イイダコと青梗菜をスープにする、蕪はしなしなになっていたので捨てた。錦糸町まで行き新しい仕事の打ち合わせ。今年はだいぶ予定が埋まっているのでプロジェクト単位でなら受けれそうだねと確認し、自分もこんなに予定が埋まってるんだなとびっくりする。黄金湯に行って早めのお風呂、ベージュのタイルがかわいい。新宿のドトールで仕事を進め、夜行バスまではタイムスに行ってミートソースパスタを食べて時間をつぶす。夜行バスは書こうと思っているテキストのことが頭をぐるぐると巡ってまったく眠れず、勢い余ってワークショップをひとつつくった。ずっと目は瞑っていた。翌朝5:30に京都に到着。
2025.03.27
ネットカフェに行くかを散々悩んで美味しいものを食べることに振り切るためにギリギリで耐える。時間の潰し方を考える。
六曜社でモーニング、鴨川沿いの橋の下で読書、ドトールで執筆、お腹が空いたので一乗寺へ向かう。前回の滞在で一気に京都も遊べる街になった。ゲリラ豪雨。ラーメンを食べて、けいぶん社で卒業論文のときの文献にした本の文庫版を買う。戻りのバスでこんこんと寝た。もう働いたり何かを書いたりするのは難しくなってきたので別の喫茶店へ向かう。銭湯へ行き整えてakakilike『倉田翠ソロ2』をみる。リフレインするシーンが、ワン(?)の時は構成の巧さとドラマチックな展開にグッと引きこまれたけど、ツーは話される内容とも相まって確実にえぐみを増してて普通に混乱した。めちゃくちゃおもろかったけど、どっと疲れてなか卯で大盛りの親子丼食べた。夜行バスに乗って帰宅、行きとは違いよく眠った。
2025.03.28
濡れた洗濯物と持ち帰った服を洗う、風呂にゆっくり入る、髭を剃る、眠る。遅刻して全てをすっぽかす夢を見て目を覚まし、ゆっくり洗濯物を干して出かける。すみだに行き滋企画『ガラスの動物園』をみる。滋企画は滋さんが座長をしっかり引き受けていて、そのことが座組全体にいい薬みたいに回って、それはきっと演出をやる人にとっても大きな好転が起きてるという印象があって、それを確かめたくてみに行った。丁寧につくられた上演、額田さんの音楽ってこんなによかったっけ?と思うくらいのリーチ状態がかかり続けている感じ。ちゃんとアマンダのセリフでウケを起こす西田さんの力量もすごい。額田さんは自分が書いたテキストを演出するのには自分のライブに敵わないけれど、他者のテキストに取り組むとその譜面的なリズムのつくり方と精緻さがぐっと際立つ。あの時代のアメリカ戯曲の上演であのクオリティをつくったことはステップアップにもなったんじゃないかとすら思う。
ただ上演時間が伸びたか押したかで移動はギリギリ、LUUPを見つけて飛び乗り、一本遅れで小田原へ向かう。駅から劇場へのルートとタクシー乗り場を調べる。小田原で川口さんが演出する『モモ』を見る。上演の散漫さと自由さに最初うっとなるけれど次第にそんなことどうでも良くなり、むしろ市民劇でその状態を成立させていることのやばさが気持ち悪いまであった。完成させて、内向きで、クオリティをそのまま吐き出したみたいな劇ばかり見ていたので、こうやって外、といっても現実とか実生活みたいな生っぽさではなくあくまで出演者それぞれが遊べるというルールを作ってしまってみんながそれを理解して作られていてまじで訳がわからないしめちゃくちゃ面白かった。散漫さ(これはずっと褒めている)に、テキストをびたびたに並走させること、これが川口さんがやりたいと思っていることで、やろうとしていること、そして演出の特性なのだと思った。あんまり日本の現代演劇のフィールドでこれをやれている人はいないし、川口さんの上演を実際に見るのは初めてだったけれど予感は外れてなかった。
終電ギリギリで家に帰宅。寒くなってきていた。
2025.03.29
目が覚めたら気温がぐっと下がっていてびっくりする。全然起き上がれないけれど連絡がいくつもきているので布団の中で手短に返す。いちごに砂糖をまぶして牛乳をかけたものをたべる。長崎から荷物が届く。マフラーを継ぎ接ぎしてつくられた赤い服、たくさんのお菓子、鍋。キッチンを少しだけレイアウトを変え、フックが滑り落ちてこないようにロープを結びつけた。夜はいつかだれかからもらったマッサマンカレーのペーストを使って即席ビリヤニにする。長距離移動の代償は思ったより大きいけれど今日は寒いので大人しく家で仕事を進める。途中ティッシュが切れていたので無印へいく。無印良品週間だからレジは大行列、人がたくさんいるところにいくとなぜが盛り上がってしまって布団のシーツを買った。帰りしなにスーパーで肉とかヨーグルトとかナッツを買って帰宅。残りの仕事を進めながらできるだけ体力を使わないようにする。夜はできればテキストを書き進められるといい。日高屋でレバニラ定食と餃子3個。口の中を火傷する。
2025.03.30
朝起きて、まだ7時だったのでもう一度寝たら11時だった。なかなかうまくいかない。気温は下がっているけれどおそらく気持ちのいい晴れ。昨日作ったビリヤニを温めなおし、冷蔵庫に残っているものを使ってよくわからないスープをつくって食べる。コーヒー。ミモザの剪定をし、切り落とした葉っぱと一輪だけ買ったミモザの花でスワッグをつくる。身体がうまく動かないのは長距離移動の反動のせいだと思う。
2025.03.31
昨日の夜どうやって寝たか覚えていない。ビリヤニとスープを温めて食べる。洗濯を済ませ、今日は雨が降るといっていたなと思い出して部屋の中で干す。短い時間で急ぎの仕事を片付け出かける。引っ越し作業の手伝い。年度末で人事異動のメール、全体的にだらしなくでもソワソワしているデスク。フリーランスとして働いていたらあまり実感することのない年度末を、大きな組織の様子を側から見ることで感じる。夕方には引っ越し作業も終わって帰宅。お腹が空いたので朝と同じものを食べる。少し横になる。働く。意外とすぐ終わらず22時をすぎる。寒いけれど缶ビールを買って飲む。寝る。明日は午前に難しいけれどなんとか乗り越えたい打ち合わせがある。
2025.04.04
新年度。すぐ日記をさぼってしまう。ここ数日は雨と寒さでずっとダウンしていた。一昨々日くらいにつくっていた豆ご飯、青梗菜のスープ、生姜焼き、春菊のサラダ。塩と油のバランスが清潔という感じで、それに救われる日々だった。お酒を飲んだらお腹の調子がおかしくなる数日。ミモザが傾かないようにもう一度支柱を張り直したりもした。
今日はいよいよ暖かくなって晴れ。晴れて暖かくなると途端になんでもできるような気がしてくる。連絡が行き違い、すこしだけざわッとした空気、小声で悪態をつくけれどお互い様。人のふり見て我がふりなおせとはまさにこのこと。明るいけど部屋の中は寒い、少しずつ仕事を進める。あんなに空いていたカレンダーはここ数日の立て続く日程調整によってびっくりする速度で埋まっていく。けれど、なににも追われていないので気持ちは比較的健やか。こうして一瞬離れた日記をすんなりと書き始めることができるくらいには。茶を飲みすぎて何回もトイレに行く。昼間に眠かったのはアレルギーの薬と気圧のせいだとすぐにわかるよ。
2025.04.07
3日つづけて花見をした。上野公園、井の頭公演、新宿御苑。どこも今がいちばんのタイミングですと言わんばかりの満開で、冷たい風すらうれしいくらいの陽気だった。お酒を飲むとお腹の調子が悪くなる雰囲気が続いているけれど仕方がない、あまり整った生活をしていない。UFOキャッチャーのリベンジ、ガラガラの串カツ田中、深夜までやってる喫茶店。あちこちにサインはあった気がするのに全部を見逃してしまう。失ってしまうことが怖くてまた電話をかける。どうしてこんなに難しくなってしまったのだろう。
2025.04.12
ブレンドはブラック、アイスコーヒーはガムシロップちょっと多めで。カネコアヤノの野音へ。しっかりバンドをやっていてとてもよかったし、リズム隊の3人(ドラム、ベース、パーカッション)がとにかくよかった。帰り際に、カネコアヤノをずっとみてきたからこそわかることだという話をいくつもきいた。自分はといえば、野音でライブをやることの気持ちよさにずっと身体を寄せていたし、声が常に選択されているような、激しさの中の丁寧さを見つめ、来る舞台の本番のことを考えていた。下北沢できれいな、だけどほとんどがごま油によってまとめられている味になった中華をたべる。たくさん話をした。
2025.04.13
朝ごはんを作ってもらい、昼前に家に帰る。仕事をする。いくつも積み重なった作業を一つずつ着実に進める。夜は西荻方面の蕎麦屋へ。天丼のセットを食べる。明日行くキャンプの予定の連絡がいくつかくる。身体が痛い。明日起きることを想像して食材をパッキングする。きっと寒いだろうから暖かいスープを作れるといい。
2025.04.14
スカンクさんとキャンプに行く。春から解禁された釣りをするんだと意気込んで竿を買った。外でご飯を作ることに慣れすぎている、舞台上で先にできるようになっていて、生活に還元されている。還元というかもうほとんど一緒。こういう、一緒、という感じがたくさんできていく。魚は魚の味がした。レモンを先にお皿に絞ってからスープを入れる。後頭部がスッキリしていく時間。夜、JJJが死んだ。全然受け入れられない。
2025.04.15
シズラーに行く、お腹いっぱいすぎる、花粉で全く頭が働かない、全然ダメ。
2025.04.20
観光客の速度、わーっと集まって何枚も写真を撮って、よく建てたねぇって談笑しながらすぐ去っていった。誰でも入れる場所は客席、祭壇の上には登ることができないという注意書き。劇場だとそこは舞台?入り込めるかな。ひそひそ声すらも反響する、ここが鯨のお腹の中。背後にあるパイプオルガンが鳴り響くときのことをいつまでも想像する。ただの建物、今日は曇っている、晴れていたら綺麗に十字に光が差し込んでくる。独り言の祈り、集まるための重力。国旗、天秤、膝置き、垂れた白い布、献金箱に数十円を入れる音。
2025.04.22
吉祥寺のドトールに通い詰めている。2匹のゴールデンレトリバーがテラス席にいたらラッキー。あのお姉さんはいつもタピオカミルクティーをテイクアウトカップで頼んで、氷を水のグラスにスプーンで避けている。
2025.04.26
夜中、4時前に人を殺す夢を見て目が覚めた。息を飲み込みながら起き上がり、本当に起きてしまうと大変なので気づかないふりをしてもう一度眠る。次目が覚めると10時過ぎていた。うどん・冷凍のシャケ・しなびた青梗菜・にら・胡桃を一緒に炊いた。通信制限がかかったのでドトールに電波を求めて作業に行く。地下にいたら雨が降ったことに気づかなかった。夕方にもう一度洗濯を回す。はとしの残りもので夕方のおやつ。一気に暗くなっていったので気持ちがそのまま眠る感じになっていく。お腹は減ってないけれど何かを食べた方がいい気がしてサイゼリヤに行き、風が強いので早めに眠る。
2025.04.27
池袋で当日運営の仕事。吉祥寺へ戻りお酒を飲む。早めの時間に解散し、羽根木へ行ってたくさん話す。一個ずつ説明したり、急にわかった気になったりする。時計を見ないまま眠った。
2025,04.28
下北沢へ行き何度目かのトライ、トロワシャンブルにようやく入れた。こんなに混んでるお店だったっけ?夕方に一度家に帰り、荷物をまとめて水性へ行く。雨の中、仕込み。ジャスミンライスと鶏のスープの匂いが立つ。3時間くらいで終えて再び下北へ。王将へ入って、ちょっとのお酒とジャストサイズのおかず。ごま団子を2個食べた。隣のサラリーマンの人は一品ずつ頼んで5周してた。
夜、何が不安なのときいたとき、誰にも死んでほしくないと聞こえた。わからないといいながら、そのことを伝える声。
2025.04.29
お店屋さんショップの日。とても楽しみだったし、ほんとうに楽しい日だった。食べ物・飲み物・物販、それぞれの流れと波が訪れて、長い時間だらだらと居続ける人たちがいる空間で、カウンターを一つ挟んだ距離でおしゃべりしたりせっせとサーブしたりした。少し早めに切り上げて、振り向いてみんなの写真を撮る。
夜はNiEWでの掲載に向けたインタビュー。これまで断片的に聞いてきた話だったり、言葉にできなくてもどかしかった部分がちゃんと話されていて、お互いの準備、緊張感のある空気、推進力の速度。この日がちゃんと成立してほんとうによかった。とてもいい一日になったね。
2025.04.30
朝から忘れ物がないかもう一度チェックをして出かける。印刷をして、ファイルに入れて九段下へ向かう。3月にやった公演で何が起きたか・これからどうしたいかを聞かれた。あまりうまく答えられない部分もあったけれど、昨日のインタビューがあって迎えたおかげで、今度は自分が自分の言葉で話してやりとりをする番だなと思って臨む。今日もまた、あまり知り得なかったことや言葉を得ることができて、こういうことは続いて訪れるよなと思う。
そのまま仙川へ向かう。劇場に挨拶をして、街を歩いてチラシとポスターを配る。苗を販売しているお店に行き、木の芽の苗を買った。左手に下げた袋の中から時折、柑橘に近い匂いがする。休憩で入ったお店で甘いバナナケーキを食べる。
夜は池袋へ。限られた時間の中で打ち合わせをしてさっと帰宅。酔っ払いの人の甘えた声。日付が変わったタイミングで通信制限が戻ってうれしい。一気にギガが必要だった仕事を片付けて眠る。
2025.05.01
朝から木の芽をベランダに植えた。今日は早稲田へ行って、ウンゲツィーファの稽古を見学する。当日の運営にはほとんどつかないので、そこに向けての準備と話し合い。夕方から急に吐き気がするような気がして、おそらく体が固まっているんだと思いながらぼんやりとした頭痛を感じながら吉祥寺へ戻る。そのまま家に帰る気になれなくて、訳がわからないまま久しぶりにパチンコを打ちに行った。2,000円だけ入れて、一回だけ当たった。継続はしなかったので元も取れず、そのまま流し込んで帰る。興奮で頭痛を誤魔化しているのか本当に治ったのかわからず銭湯へ行った。やっぱり体が固まっていたみたいで背中と首をすこし乱暴にぐるぐると回す。パンダ銭湯という旗が立っていた。なにかよくわからないけど知らないパンダのキャラクターが銭湯内にたくさん貼られていて、笹の匂いのお湯になっていた。チョコバッキーを食べながら歩いて帰宅。いい気温!
2025.05.02
大雨。そういう日もある。部屋がどんどん暗くなっていって早めに眠った気がする。
2025.05.03
晴れ。新しい葉っぱがどんどん出てくる季節でうれしい。ベランダの向こうで知らない鳥が鳴いている。WSオーディションの日。はじめましてから街を歩いて発表ができるということのびっくりを改めて感じる。他己紹介をしているときにどちらに質問をしているのかわからなくなる感覚。終わりは時間から溢れてはならぬという緊張感。帰り道で「かあちゃん」という定食屋に入ってチキンカツ定食(でかい!)、大盛りご飯を2杯食べた。橋本さんがその定食屋を見つけたとき、お腹が減って力が出ないと言っていた顔から一気に明るくなってよかった。満腹でぼんやりとおしゃべりしながら帰宅。家に着いたらシンクに知らない虫がたくさん死んでて怖くなった。水で流して、念の為掃除機をかけて眠る。明日もいい日になる!
2025.05.04
WSオーディション2日目。昨日とはまた違う人たちと出会う。昨日よりも日差しは強くなくて、だけどもっと明るい日だった。寝坊しかけてあわてて家を飛び出したけど乗り換えがうまくいって少しだけ到着が早まる。今日は発表をつくらなかったのでみんなが散歩に出掛けている時間をぼんやりと過ごす。帰ってきた時の顔がみんなよくて嬉しい。ときどき何かを言いながら、すこし離れたところから見ていた。自分が見ていたチームが発表をする番になるととても緊張した。おわり。打ち上げでオリーブの丘にいく。ワインを赤と白一杯ずつ飲んで、パスタとピザと前菜とサラダをたくさん頼む。モンブランを久しぶりに食べた。ゆっくりとした頭で二日間のことを振り返りながら帰宅。あしたはもっと東のもうすこし奥の方へいく。
2025.05.05
今日も東東京へ行く。気づいたら5日間連続で葛飾区へ向かうらしくいっそのことそちら側に宿を取ろうかという気がしてしまう。手探りながら新しい人と会い、少しずつしゃべっていく。
帰り道、途中の駅で降りて30分だけ駅のホームでオンライン打ち合わせをする。準備をしていたのでさっと終わった。そのまま人の家に行き、くたくたの身体を横にする。ワンタンラーメン、ひじきのカップデリ。お風呂上がりにハーゲンダッツのラムレーズンを食べて眠る。明日は雨、洗濯物が濡れる。
2025.05.06
おそらく寝過ぎた。ペリカンのパンをふた切れと、スクランブルエッグ、春菊のサラダをたべる。15日分の日記を読んで、それが話しをすることと変わらないこと、ミモザを切って渡すことと同じであることを確認する。傘を借りて明大前まで歩き東東京へと向かう。昨日に続いてまた新しく6人の人と会い、夜遅くになって解散。乗り換えの案内を見なくてもどの電車に乗るかがわかる。今日は気温が低い。冷凍の麻辣麺(?)、ひじきのカップデリ(今日はまいばすけっと)を食べる。ここ数日の情報量の多さにすこし頭がくらくらしていてそわそわする。こういう時は手を動かすといいと思いパソコンに程々に向かう。もらったイラストを切り取っていく。お風呂に入る。明日は晴れ、濡れた洗濯物とまとめて一気に洗濯をする。
2025.05.07
DosMonos、山二つの新譜、デザインあneoのテーマソング2。朝からそれぞれ流しながら洗濯を回し、部屋の細かいところの掃除、化粧水やハンドソープの詰め替えを進める。ロンTがぜんぶ出払ってしまったのでTシャツと羽織を着て出かける。
稽古。自分がなぜバストリオにいるのか、今野さんや本藤さんと考えていることや捉え方が違いすぎてそれで大丈夫なのだろうかという不安に似た気持ちが押し寄せてくる。おそらくこれはメンバーになるとなったときからうっすらと感じていたことではあって、でも、違うからいるのだということを今日はじめて思えた。邪推や緊張のようなものをちゃんと感じ、それをちゃんと自分として受け止めて、今日という日を過ごした。つくった発表はおそらくそこまで完全にうまく行ったわけではなかったし、おもしろかったわけでもないかもしれない。けれどこういうことでどんよりと引きずって落ち込むということもわけがわからないし普通によくないことだなと思えるような状態にはなったらしい。
2025.08.20
東京に戻ってきた。2週間はあっという間でなにも変わらず戻ってきたと思ったけれど、働くことのサイクルはすっかり見失っていてこうして日記を書き始める。ぼんやりとした頭で家のことを片付けつつ、植物の様子を見ている。ついにミモザが蕾をつけ始めた。次の春には黄色い花をつけるだろう。支柱を折るほどに重たく傾いている。明日、蕾を切り落とさないように慎重に形を整えてあげる。今日はこれからぼちぼち働いて、自分のWebを更新しやすい形にすこしだけ作り替える。SNSをすこしずつ離れ、ちゃんと文章を書いたり読んだりする時間を作りたいと思う。もうすぐ秋が来る夜の気配が東京にも流れていることが嬉しい。
2025.08.23
ゆっくり起き上がり、なにもできない。そろそろ働き始めたい気持ちはあるのだけれど、大きく削れてしまった体力と集中力がなかなか戻ってこない感覚がある。植物の切断面を保護する薬が届いていたのでチューブを開けてみると独特な黄土色に、鼻につく匂いがした。薬は薬らしい匂いがする方が安心する。ノコギリの刃先を綺麗にしてミモザを切っていく。この夏であまりに大きくなりすぎていて隣の家の勝手口側に侵入し始めていたので流石にと切り始めた。ロープで牽引し、隣家の玄関先から方向を変えてのぞいたりしながらバランスを見てざくざく切っていく。部屋の中にごろっと横たわったとても重たい枝先にも蕾がついていた。知床に行っている間に手に取った川村喜一による写真集の中に写っていた、撃たれた鹿のことを思う。ゴミ袋二つ分、手際よく重量を切り分けていく。迷い込んだ蟻や蜘蛛も手際よく外に出した。蕾がつくのは今年が初めてて、無事次の春に咲くといいが、今日の剪定がどう影響するだろうか。長い時間をかけて向き合うもののこともうまく捉えられなくなってきている。蕾がついていた葉先は小さく切り分けて一つは花瓶に、もう一つの塊は束にして吊るした。
明日は今年おそらく最後になるであろう渓流釣りに行くために資材の買い出しに行った。ついでに空っぽになっている冷蔵庫を埋めるための食材の買い出しも済ませる。一息つく前に銭湯へ行き、よく休む。家に帰っても何もできずパラパラと送られてくる連絡に返事をしたり、横になりながら画面を見続けている。
2025.08.24
川に行く。家を出るときに目的にしていた場所は家から電車で一時間くらいの場所だったけれど、同じ電車に乗っていた人の多くがそこで降りようとしたので、そのまま乗り続けもっと奥まで行く。気づいたら先月スカンクさんと一緒に来たところの川向こうの方に降りてきていた。初めてからすぐ、大きめのサイズのおそらくニジマスが釣れた。ギャンブルみたいな当たったときの震えの興奮はあまり感じられず、川の音、徐々に冷たくなる足と日に焼けていく感覚の方がジリジリと迫ってくる。遠くの方の岩の上にサギが止まって川の中を眺めていた。早いうちに集中力が切れ撤収する。小さなハサミでエラを切って内臓を取り出して血抜きをする。切り離された内臓と一緒に一匹を並べて写真を撮った。
次来る電車を待ちながら山菜の漬物を買う。帰りの電車は想像していたよりも混んでいて、濡れたサンダルで踏ん張りが効かなかった。
2025.08.28
朝ミスドに行き集合時間の10分前前までドーナツを頬張っていた。冷たいミルクは家で飲む牛乳と味が違うことを知っているのであると頼んでしまうことがある。午前中のうちから本番を一つ、子ども相手に見せてどっと疲れ、休憩は2時間のおしゃべり。早めに終えて喫茶店で少し詰まっていた仕事を進めそのまま帰る。西荻窪でごはんを食べワインをグラスで何杯か飲む。選ばれたワインはどれもおいしく料理に合う。ペアリングされていなくても味のトーンが揃っていることがお酒をサーブすることの喜びの一つだなと思う。夜道を歩き、話し、また家に帰ってくる。明日は別の家に帰るために荷物を整えて眠る。
2025.08.30
上演を終えて一度家に帰る。家のことを少しだけ整えてまた下北沢に向かうと、こんなに暑い中、外のテーブルに座って話している二人がいた。ホロスコープについて伝授してもらっていると笑顔がこちらに向く。話にすこしずつ混ざりながら、この人が別の人となにかを話しているという状態に直接立ち会うのは初めてだなと思いながら、普段との様子の違いを見ていた。6時間近くこうして話していてお腹が限界といってみんなで王将に向かう。思い思いに頼み、自己紹介も兼ねてたくさん話をする。聞きたかった話、このお店が劇場的な場所なのではないかという話から急に盛り上がり、食べ終わった料理の皿を使って図示したり、それこそホロスコープの占い的な言葉で自分のことを判断されながら言葉を高速で交わす。こうやって知らないことを知っていくのだという時間と、他人をこうして判断するような言葉を使っても許される時間のことを思う。なにかがわかると場が落ち着いて、もう流石にといって23時ごろにお開き。下北沢から歩いて帰りながら、ぼんやりした人の手を握っていた。家につくとどうにもヘロヘロになっていて、この時はまだ気づいていなかったけどおそらく熱中症、それでも動き続ける口。これまで話したことがなかった、もしかしたら話すことがなく一緒にいられるのかもしれないと思ってちょうど1年経った頃に、そのことを話した。とても回り道をしながら、お互いの話を丁寧にして、ずれているとか違う、みたいなことにあまり引っかからないで、ただそれとして聞きながら、それでも何度も戻ってその言葉を重ねた。関係性のこと、誰かと一緒にいるという感覚の話。初めてこのことが受け入れられた、そう一方的なことだけではないけれど確かにそう思ってゆっくり眠る。
2025.08.31
案の定寝坊する。上演を見て、片付けをして打ち上げ。なんで演劇をやっているんですか?と問われて、自分の感覚を再び言葉にする。もう何度目かわからないし、このことが話をするたびに精度が上がっていく感覚と、本当にそうか?という疑問が生まれる。ほどほどに解散、再び家に帰ってからまた家に向かう。昨日話しそびれていたことがあった、というか話を終えてなにか伝えそびれていることがあるという気がして、またたくさん話をした。本当にこのことが伝わるだろうかという不安があまりない、きっとこのことを話したとしても一緒にいることができるという確信めいたなにかを持ちながら口がするすると動いていった。ちょうど一年とちょっと前、すこし強引な、というか何か変な引力がかかった瞬間のことを何度もリフレインする。どちらからともなく話を終えて、またすこしだけ口が動いて、もうそのときに何を喋ったのか、それでもいつものようにどちらからともなく話を終えて、それぞれのタイミングで眠った。
2025.09.01
寝坊して、持っていっていたお惣菜をパンにのせていい朝ごはんを食べる。このお惣菜があって助かった、と言われて、毎週500円とかでデリバリーするよ、というアイデアを昨日話していた。他者の食べることの不安を、こうやって解消することができること。整理整頓のバランス、なにかが崩れそうになる時のセーフティーネット。この数日で、自分でもはっきりは自覚していなかった言葉がいくつも出てきて、自分はこうして人と一緒にいるということを選んでいくのだと感じた。ちなみに病院でこのデリバリーシステムは褒められたらしい。外注、と言っていたな。その人の身体の代わりに、その人のことをやること。全く演技でもない、演劇のはなしとも違うと思う、きっと。
松戸へいって稽古、移動の時間は仕事をしようと思っていたけれどほとんど動画を見てしまう。帰りがけに無印でデリバリーシステム用のノートを買う。そういえばポッドキャストを始めたい。ようやく何を話すかが見えたのだった。家についてさっとお風呂に入り、ご褒美として注文していたサングラスを受け取る。暗い部屋の中ではどういう感じかわからないけれどおそらく似合っている。ここ数日さぼっているというか、あまり動かないようにしているなかで働いていて、今日もそのようにして眠るだろう。一つ文章を書いて、健康診断の問診を記入する。
2025.09.02
あまり早くは起きず家のことを整えて駅にちょうど着くタイミングを見計らって家を出る。今日はタルトをつくるのを見る会。一緒に八百屋・粉屋・無印をまわって買い出しをして順調に家に戻る。タルトの型を手に入れた。手数が多いものの方がいいということでタルトになった。巨峰はとても甘い。お菓子をつくると想像以上の砂糖とバターが入っていて毎回新鮮に驚く。料理をつくることには慣れているけれど、お菓子は、どうアレンジしたらいいのかわからないからすこし苦手だ。どの分量をいじっていいのかがあまりわからないノットフリーダムキッチン。慎重な手つき、ゴムベラと木ベラの使い分けの話、なにを考えている?という質問、すこし緊張するのは失敗がこわいからで決して見られているからではない、とやっぱり思う。綺麗に焼き上がる。葡萄が熱で染み出して、タルトの縁が色付く。ほんのり温かいタルトはつくったからたべられるものだと、おそらくお菓子作りの醍醐味としてはだいぶメジャーなきもちを大発見のように共有する。ついでに梨のタルトもつくって、もう18時は過ぎていたけれどおやつだったので晩御飯はサイゼリヤにいってほどほどに食べる。明日は健康診断。夜はすこし嫌なことがあって、ほとほと疲れてしまって、こういう悪意からはなれた場所に行きたいという気持ち、抱き合って眠る。
2025.09.03
健康診断はサクサクスタンプラリー。目の前で記入された身長や体重すらも10月の中旬にわかるらしい。身体から出てきた血は血の色がして真っ赤だった。急に思い立った差し入れのためにもう一枚タルトを焼く。クリームの部分にカルダモンのパウダーを入れた。
夜はkanekoayano『石の糸』リリースツアー。途中から何をみているかわからなくなった。なんで音がでているんだっけ、なんで光は光っているんだっけ、ギターはどれくらい強く弾いたら弦が切れるんだろう、この人たちはどうしてあつまっているんだっけ、練習はどうやってるんだろう。音も光も激しくなって飲み込まれていくような瞬間が後半にかけて重なる。それぞれが自律的な、バラバラなサイクルで生きている、でも同時にだれかと集まる約束をしてこうやって時間を共にしている。集まってみんなでまとまるだけのやり方じゃない、引っ張り合うような極端な形でも一緒にいることができるのだと、やはり何をみていたのかわからないことばかり考えていた。終わりごろ、隣でみていた人は観終わってから「ぜんぶわかった!」と言うのだろうかと想像して、ほんとうにそのままの言葉が口から出てきてケラケラと笑った。夜は下北沢で都夏にいってお酒を一杯と、季節の野菜でできた食べ物。炙りしめ鯖はしらない味がした。帰り道にある橋の上でしばらく座って話す。引っ張られて浮いたダックスフンドの行きと帰りを見届けたところで帰宅。もうしばらくの間、そしてこれから先ずっと諦めていたので忘れていた、隣にいる人にそんな言葉を言われたら泣いてしまう。本人はかっこつけたこと、そのあとまたすこし体調が悪くなって呼吸を一緒に整えたり保冷剤を手渡したりしたことのギャップを恥ずかしがっていた。
2025.09.04
差し入れのタルトを持って数分の会話、ADDAのカレーをはじめて店内で食べる。ちいさな炊飯器からダルがとろとろになったものを取り出す手。
束の間のお茶のあと三鷹に行き、いいへんじ『われわれなりのロマンティック』をみる。この作品/団体が果たそうとしている役割があること、それが広く伝わる形で達成されていることにまずは安心する。一方で、そこにはない手触り、超えられない線のことばかり考えていた。もうすこしこっち側に来てくれ、そのような無害さで記号になりに行かないでくれということ、そして俳優に期待し続ける2時間。おそらくこれは手を取り合うことができないような気がするという絶望に似た気持ち。別のやりかたじゃないとやれないこと。下北沢にもどり再びお茶をする。風と雨の気配を感じて早めに家に戻り、また長く話してねむる。
2025.09.05
台風の影響による低気圧に備えていたけれど二人とも案外すんなりしている。連日遊び過ぎたからなにもしないことにして家でしばらく過ごし、歩きたくなったので下北まで行ってバインミー。その後トロワ・シャンブルで3時間お茶をする。ここ数日のこと、一緒にいることにした日からの出来事、これから少し先のこと、目の前のこと、わたしとあなたの関係性のこと、全部をないまぜにして話し続けて、似たような体調が悪い人・そのひとの隣にいる人になにか伝えられることがあればということで本をつくることになった。家に戻り、復職のための作業をする人を見守りながらゴロゴロする。外は気づいたら晴れ間がみえている、電気をつけなくても過ごすことができる部屋、徐々に相手の輪郭が闇に溶けていき、触れているこの手がその輪郭・温度・息遣いのことを確かめる。ぜんぶぜんぶいい方向にいく、ぜんぶとしか言い切れない、こうして過ごした数日間はきっと13分か14時間の映画になる。どのショットからはじめられるだろう。うれしいという気持ちがこうしてはっきりと訪れた日を思い出せないくらいに忘れていた。さっと丸亀製麺で晩ご飯を食べて解散。
夜は吉祥寺でお酒をのみ、ずっと開きっぱなしの頭のままだったとおもう。明日からまた働き始める。
2025.09.06
重たくなったからだをなんとか起こして立ち食い朝ごはん、洗濯物だけかろうじてまわし柴又へ行く。稽古の様子をみながらするすると作業をすすめる。なににも集中していない、けれど集中している時間。ここ数日の日記をまとめたり、どんどんやってくる連絡を打ち返したりしていた。8時間のほとんどを作業に充てほとほとで帰宅。電車に乗っている時間が長いし、まちがえて空腹になってしまったので辛い移動だった。本を読むこともできない。日記を書いていると次第に文章を打ち込むという習慣ができてきて、しばらく取り組めていないテキストの執筆ができそうな気がしてくる、いい調子。最寄駅で10日の松本行きのきっぷを買い、日高屋でお腹いっぱいになり帰宅。あした朝に寄ろうと思っていたパン屋は知らないうちに閉店していた。
2025.09.07
朝から稽古、家のことはほとんどできないまま家を出る。明け方に一度目が覚めた時に水をがぶ飲みした記憶があるけれどあれは本当だったんだろうか。バストリオが10月に京都で上演を行う作品の稽古初日。リーディング公演、しかも現代演劇の翻訳戯曲ということもあり、テキストを声に出して読みながらひっかかるところやどのようにやれるかという案をざっくりと共有していく。内容はあまりにも悲惨な、意味を一身に引き受けてしまうことだけになってしまいそうなものと、文字に記録されて翻訳されているという遠さ、作品として構成された手つきのうまさのことなど、重たくならずに軽やかな会話が行われるが心のどこかはずっしりと重たい。
帰りにスーパーにいって買い出し、家に戻ってデリバリーのラープをつくる。梨をもらっていたので枸杞梨湯も一緒に作って持っていこう。業者のようにつくるキッチン、一瞬にして東南アジアの匂いになる。お惣菜として日持ちをするように水分と味付けの分配をコントロールしながらつくっていく。culinary art、最近出会った言葉で、自分の活動を言い換えるならこれだという気持ち。SNSにそのことを投稿した。
洗濯も終えちょうど落ち着いたところで連絡があり、ラープを持って家を出る。明大前で合流して歩いて帰る。とても大丈夫そう、ずっとニコニコしていて、でもヘロヘロで、とにかく楽しかったということを同じように繰り返してしゃべっていた。お疲れ様と何度も声をかけ、アイスを奢って、また同じように話をきいて、大丈夫じゃないという気配を一瞬も悟らないうちにお風呂に入らせてこの日記を書いている。明日は出勤。
2025.09.10
いつもと逆の方向の電車に乗り立川まで向かう。そこから特急あずさに乗り換えて松本へ向かう。約3時間の電車移動はかなり山道を進み、普通に気持ち悪くなりながらまとまった時間が必要な作業を進める。
松本市民芸術館、想像していた以上にとても綺麗なホールで、直接は初めての人にあたたかく迎え入れてもらう。すでに始まってるみたいに話し始める人。
松本少年刑務所の身体表現クラブの見学。つるっとした壁がぐるっと囲んでいるが、鳥は関係なくその境界線の上をのらりくらり飛んでいた。何度か鍵を開けるのに失敗して弱いサイレンが鳴り続ける。受刑者をみるのははじめて?という問い、見る?
知らない人、過去におそらく犯罪を犯した人たち。年齢がわからない。みんな同じように頭を丸めていて、明るい緑色の服をきている。話し始めたら一瞬だった。監視をする人が空間の細部に意識を張り巡らせている。じぶんの身体がそこにあることを感じることができるのはその人が見ているからだった。受刑者とは直接交流をしないでください、話しかけないように、ただ見学というだけです。受刑者たちの身体がぎこちなく動くのをみて、自分の身体との違いがわからなくなる。とけるとかではない、肌と肌が同じ空間にあって、離れている。決して近づくことがない距離がある、つながっているのに透明なガラス越しで見ている見たい。一瞬でもあった目はすぐに逸らされる、こちらが何を見ているか気になるけれどそれがよくないことのよう。身体の輪郭がはっきりしているようでぼんやりしている、ケーキを三等分できないから?ゆがめられた重力に触れている、触れたい、と思ったときに倉田さんが直接触った。その皮膚の触り心地、だれかを殺したかもしれない手、薬が通ったかもしれない喉、ぎこちなく分厚い、そして消えてしまいそうな輪郭。窓には格子状の柵が付けられていて、その向こうで青暗くなっていく空をうまくみることができない。この人がなにをしたのかはあまり興味がない、いま何を考えている?どうしてそこにいる?その身体とこの自分の身体の違いはなに?交換するとかでも、想像するとかでもない、物理的な距離としてその隔たりと隔たりのなさを考える。