2024.01.01
昼からずっと食べ続けた。机の上に乗り切らない食べ物が並んでいる。16時過ぎに緊急地震速報が流れ、正月の雰囲気が一変した。テレビ番組は全て報道に切り替わり、2011年に見たものとは反対側の海岸の色が染まった日本地図が映し出されている。あの日わたし小学5年生で、あの時も夕方ごろで、家に帰ってから流れ続ける日本地図と避難を促すスーパー、数字を大きくする震度と増え続ける死者数・行方不明者数のことをいまでもずっと覚えている。当時より年齢を重ね、無力感が急激に押し寄せてきてリビングで横になっていた。明日、明るくなってから状況がわかるだろうか。
2024.01.02
浦上川、川辺の緑がふさふさしていていい感じだった。携帯で焼け野原になった街を見てどうしようもなく泣きそうになってしまう。ここでは何も起きておらず、予定していた通り初詣に向かい祈る。野良猫がいっぱいいた。夜、羽田空港で事故が起きた。乗客は全員無事というニュースが流れた後、海保の航空機に乗っていた5人は亡くなった。被災地に向かうところだったらしいし、機体は2011年に仙台空港で被災しながら唯一生存していた機体とのことだった。「みずなら」という名前がかすかに記憶に残っていた。言葉にすることができないなにかに押しつぶされそうでいる。事故や災害、虐殺の情報をうまく引き受けることができず、自分がいまいる状態と目に見えていることのギャップにエラーが起きている。2011年、画面越しに見ることしかできなかったときに持った身体の中の鉛のようなものがもう一度重たくなったような気がする。こういう時、東京という土地にいることは、孤独で、話をできる人が近くにいると思えてまだ過ごしやすいのだと気づいた。長崎は自分にとってあまりに閉鎖的で苦しいという錯覚が起きる。この場所のことは好きだけれどいられないと思うのはこういう部分。
2024.01.03
夜、中高の同級生と会う。近所の飲み屋街、人がほとんどいない居酒屋に入って3時間くらい話した。ふっくらしたアジフライ、島唐辛子の餃子、たくさんのハイボール。大学を休学していること、大阪のみなみでホストをやっていること、それなりに昇進していること、高校時代のコンプレックス、現状、これからちょっと先のこと。将来の牛丼を約束して奢ってもらい、タバコをお礼に買った。会いたい人に会うという機会とタイミングを逃さないこと。川は相変わらず緑に見えてよかった。
2024.01.04
大きく変わった駅のショッピングモール(?)を隅々まで見て回った。結局セールで1000円になっていたBEAMSの黒いリングと、DIESELの靴を買った。母親とあれこれ見ながら、自分たちの服の趣味について話す。似合うものや好みが姉と三人似ているという話をしながら、奇抜な色のことなどを言っていたけど、大きくは形の話だなと思った。服のデザインにとどまらない、もう少しレンジの広い話として形がいい、というのはやはり大事らしい。
2024.01.05
朝からかかりつけの病院に行って手荒れの経過観察。ずっと服用していた漢方が切れてからもうそろそろ一年が経とうとしていて、そこから一向によくなる気配を見せなかったけれど、もしかしたら手汗によるかぶれになっているかもしれないと言われて新しい薬を試すことになった。目に入ってしまうと瞳孔が開いて眩しくなってしまうらしい。保険証のお金は払っているのに保険証の有効期限が切れていて、全くそんなこと気づけず、全額自己負担で払った。保険証を再発行してから改めてお金を返金してもらうことになる。昼から中学の同級生と会い、会うまでは何を話すのだろうと思っていたけれど7年は思ったより長くとめどなく話した。彼女はとても痩せていて、当時なんとなく纏っていた不健康さと弱さみたいなものがだいぶ薄れていた。車を運転するようになっていたことにとても驚いたくらいだ。夕方に解散して、プールに顔を出し顧問の先生に挨拶をした。みんな、良くも悪くも変わらないな。帰り道友達の白サバ柄の猫と遊ぶ。
2024.01.06
昨日の夜、また白サバに会いに行った。汚れきっていたのでおしぼりで身体を少し拭いてあげて目ヤニを取ってあげる。一帯の猫の様子をずっと見ているおじさんと会って、白サバとずっと一緒にいた猫がもういなくなってしまったという話を聞いた。昨年の12月頭ごろまではまだいたのにと母から聞いていた。ということを書き忘れていた。
朝からできるだけ無理しないように仕事を進め、テレビをときどき見て、のんびり過ごした。正月に向けてたくさん準備していたごはんはほとんど残りわずかになった。実家にいるときは母親とひっきりなしに話し続けるので喉が少しだけ枯れる。仕事にある程度区切りをつけ、早めの晩ご飯を食べ、空港へ行く。手荷物検査場を通る前に機内で聞くアルバムをいくつかダウンロードしておく。カミソリを捨て忘れていて、廃棄してくれた彼女の手が少しだけ切れてしまった。非常口側の席。心なしか、CAさんの非常時の説明が丁寧で、周りの人もイヤホンを外して聞いたりしていた。うっすらと頭を掠める事故の映像、あまり気にしないようにPUNPEEの「MODERN TIMES」を聞きながら目を閉じた。
2024.01.07
帰京。江ノ島の海は眩しくてグレーでぼんやりしていて、頭の中の江ノ島の海のイメージとまったく同じだった。失くしたと思っていた指輪が落ちてたよという連絡。花束を買い、気持ちのいい風が吹き抜ける総武線に乗って打ち合わせに行った。夜は久々に冷凍食品を食べる。
2024.01.08
朝から植物の仕事をして、思ったより冷えるなと思いながら表参道の通りを歩く。いつも行列ができていて行くのを諦める喫茶店でモーニングを、と思ったら11時開店のはずが店内に人がいる気配すらなく、今日が祝日であることを思い出した。電車や街には振袖姿の人がちらほらと見える。仕方なく渋谷まで歩き行き慣れた喫茶店でタバコをたくさん吸う。この喫茶店にこの時間帯に行くのは初めてだったけれど、人が少なくて、本を読んでる人とかもいて祝日をすこしだけ味わっている心地になる。昼過ぎからは劇場に行き、長崎から買ってきたお土産を「小麦と油の味がする硬いお菓子です」という説明をしながら置いた。片付けはあっという間に終わり、何度もお礼を言われた。家に帰ってまた冷凍食品(というのも昨日まいばすけっとでまぜそば系の冷凍食品が3つで540円とかなりお得だった)を食べる。連日夜に洗濯物を回し、今日は少し早いからとお風呂にお湯を張って漂白する。お湯が冷めて茶色くなるまで漬け込み2回分の洗濯物を回す。荷物の不在票が2枚入っていた。市役所にも行きたい。仕事が続くと生活の余裕がないような気がするけれど、夜の時間に掃除とか洗濯ができるようになっただけかなりゆとりが出ているような気持ちになる。習慣を変えることで心持ちが変わる、という方向をわりと信じている。
2024.01.09
CBNを吸って眠ったら浅いけれど気持ちよく眠れた気がする。8時に出勤してゴミ出しや掃除、搬入の立ち合いなどをする。空気が冷たく骨が寒いと感じる季節が訪れている。着々と作業を進め、隙間で別のことをやりながらも23時まで変な集中を働かせる。家について冬物の服を漂白したり軽い掃除をしたりして夜遅くに眠った。東京に戻ってきてからはまだ落ち着いた生活をつかみ取れずあくせくと時間が過ぎていく。
2024.01.10
久々に余裕のある日。午前中に再配達の荷物が届くので家のことを進めながら佐川急便とヤマト運輸の到着を待つ。2回目の洗濯機を回している時にモーターの異音がして、どうやら給水ホースが詰まっているらしく明日メンテナンスをする。午前中が終わるギリギリまで待ったけれど佐川だけ来ず、手紙を貼って買い出しに行く。90分くらいかかると見積もっていたけれど集中していたので60分で買い物と保険証の再発行を終えた。来年の確定申告のためにいろいろな支払いの登録口座の変更なども済ませられて調子が良い。届いた靴を履いて出かける。ほとんどなにも準備せずに打ち合わせに乗り込んだけれどサクサクと話が進み一つ仕事が決まった。あまりにも腰と足が痛いので銭湯へ行くが全然改善しない。部屋が寒くてすぐに布団に潜り込んでしまうけれど、ちゃんとストレッチとかした方がいい。1日でコーヒーを4杯も飲んでいるので胃が妙な感じになる。コンクールの一次審査を通過したという連絡。夜は飲み会。まとまらない、東京っぽい時間の進み方にすこしだけ眩暈がする。
2024.01.11
朝から仕込みをして、何度か失敗をして、洗濯機が治って、もう一度買い出しに行って、タバコを吸って、迎え入れて、片付けして、打ち合わせして、それとなく覚悟が決まって、自分のご飯食べて、風呂入って、眠る。
2024.01.12
寝過ぎて頭がいたい。寒くて力が入っているのか、足腰と首周りがずっと重たい。ビールの買い出しに行き、お金を銀行に振り込んだりした。明日の鍋の仕込みで、本気の水炊きを作り、あまりのおいしさに驚く。夜は一人のお客さんを迎え入れる。まかないと称して残り物をたくさん食べ、適当な映像を見ながら眠った。明日は朝から撮影。
2024.01.13
撮影の日。鍋を準備してみんなで食べた。久しぶりに夕方から酒を飲んだら体が言うことを聞かなくなって2時間くらい眠った。全部のやる気と予定が吹っ飛ぶ。ずっと前に借りていた映画をようやく観て、残り物のご飯を食べて静かに過ごした。NISAの口座をついに開設し、勢い余って変なアプリに課金してしまう。まあ、音楽のストリーミングをSpotifyに変えて3ヶ月無料の分で、と思えばなんてことないか。タバコをそろそろやめてもいいかもな、とふと思う。チケットの予約ができない。寒さに丸まり、甘いものが食べたいけれど買いに行く気力もなく、暖房の側から抜け出せない部屋。
2024.01.14
近所に出かけるだけの時は厚手のコートを着れない。昼過ぎから吉祥寺シアターでスペースノットブランク『言葉とシェイクスピアの鳥』を観劇する。脈絡など覚えていないし、唐突に始まって唐突に終わることしかなく、クライマックスとオープニングをずっとやっているようなリズムは健在で、唐突に訪れた透明のアクリル板に書いて解き始めた四則演算の脳トレみたいなシーンをやけに覚えている。生中継で映像に映されていて、透明のアクリル板越しに文字を書く人が見えている。舞台の奥で、かろうじて見える姿と、カメラを向ける人、アクリル板を抑える人。答えに辿り着かないままそのシーンが終了したのがとても良かった。手前の方では多分人がたくさん出てきていて、聞き取れない言葉を何か話していたと思うけど、計算をする人の映像がとにかく温度が高くそれ以外のことは何も目にも耳にも入ってこなかった。あとはチェーホフの拳銃のシーンと、普段踊らない人が突如踊り始めた瞬間、舞台上でみるのは初めてでそんな声を出すんだという驚き、いつもスペノを見た時と同じ断片的な印象しかないけれど、とにかく答えに辿り着かない計算のシーンはここ数ヶ月見た作品の中で一番いい時間だった気がする。音響がいい仕事をしていたことも良かった。鳥の囀りと重低音のノイズが入る瞬間と消える瞬間はリズムが作られ、今回はとても音にフォーカスした作品のように見える仕掛けになっていて良かったと思う。けれど、このいつもの手つきをなぜ続けているのか、その先に何があるのかよくわからないという気持ちになり、同時にまったく面白くなかったのかもしれないという感覚が家についてから訪れた。
音響の片付けを手伝い、車両の搬出を見送って、最寄りのまいばすけっとで適当な買い物をして家に帰る。サッポロ黒ラベルを飲んで、普段そんなことしないので普通に酔っ払ってまたやる気をなくしているけれどそんな心持ちでこの日記をつらつらと書く。届いていた南杏の匂い。何本も吸うタバコ。
2024.01.15
早く眠ったらちゃんと早く起きられたし夢は見なかった。やけに寂しい気持ちで布団に入った感触だけがある。朝から掃除と洗濯を済ませ買い出し、杏仁豆腐用の生クリームを忘れたので出かけしなに買うことにする。やることを手元のメモにまとめ、電車に乗る。電車の中でやることは着いた先でご飯を食べる場所を探すことと日記を読むこと。前も調べて気になっていた喫茶店を見つけて、乗り換えのタイミングでちょうど一月分を読み終わった。自分もいずれ日記を出版してみたいなと思うけれど、わざわざ印刷するなら詩集とかエッセイのような、日々とは少しタイムラインがずれている方がいい。予定を書いたメモを全くこなせず頭の中の方ばかり捗るから、見えてるものと頭の中のギャップに疲れてしまう。個人ではできて集団ではできなくなること、とその逆。展示を見に行くということは川の見える場所にいくということ。よく見ずに行ったら休廊の日だった。ゴミ出しを忘れるくらい今日を日曜日だと思い込んでいたので、目には入っていたけど普通に間違えたのだった。やけに風が強い日で、このあとのことは何も覚えていない。
2024.01.16
夜、歴史についての話を聞く。この場所がなくなるということ以上の余白や別の考える余地を持つことができない。この場所が無くなるということは、この場所が無くなるということだ。終えてから明大前のチェーン居酒屋で安飲みをしながら、全てあけすけに打ち明けているようでいて重力に働きかけ続けるような話をする。
2024.01.17
朝から仕込みを終わらせ、この前行けなかった展示に行く。一階と二階を這うホース、中には赤色の液体が通っていた。布に印刷された写真、写真が印刷された布、両義性の間で吹き抜ける風に揺れていた。そのまま夜に展示をしていた人とその友達がご飯を食べに来た。笑ってたな。くたびれてアイスを半分しか食べられなかった。これはほとんど上演をするときと同じような疲労感が訪れるので、生活との付き合い方を探るのも大事なことだなと思う。
2024.01.18
妙に緊張した。香りの話をしてくれて、パーティーという言葉に差し入れを持ってきてくれた。おもしろかったと言ってくれて、ずらされた組み立てへの言及も鋭く、自分では作れないと言っていた。しらすを臭みとして使っていることを指摘されて、流石に笑っちゃった。
2024.01.19
満杯のWWWは久々に見た。ポップさと伸びのある声を響かせるバンド、こんなに気持ちよく歌えたら楽しいだろうな。帰り道でミーティングに出て、ようやく歯車がギシギシと回り出した。
2024.01.20
朝から鶯谷に向かい仕事をする。キネマ倶楽部は昭和の雰囲気が漂ういい箱だった。今にも雪に変わりそうな冷たい雨が降っていた。ずっとぼんやりと過ごし、寒いから眠たいのだと思い込んだ。
2024.01.21
朝から打ち合わせをして、妙なバランスで細い線を見つける。いい時間といい重力が流れていた。昼からはさっきまでズームで話してた人と対面して打ち合わせをして、夜はもう一人の人とお酒を飲みに行った。最近は、場の重力みたいなことばかり考えていて、その先にいる個人のことをとてもよく見えているような錯覚が訪れている。錯覚じゃなくてほんとうかもしれない。見つけてはいけないものを見つけてしまった夜、うれしい連絡が来た夜、この夜はどっちも同じ時間で一つの夜だった。体の中にいくつかの非対称を作ることができてから、心理的な調子がいい。
2024.01.22
とても早起きをして、全く乾かなかった洗濯物を横目に川崎に向かう。南杏を水につけ帰ってきたらミキサーにかけられるようにしておく。植物の仕事を手伝うようになってから、これまで馴染みのなかった場所や場面に出くわす瞬間が多く、あまり慣れないサイクルやコミュニケーションに妙な気疲れが生じる。みんながみんな、重力のことを知っているわけじゃない。昼はラゾーナ川崎のすこし豪華なフードコートで天丼を食べる。仕事を終えたら、随分前にピンを立てていた川崎駅近くの喫茶店へ行き数日分の日記をまとめる。とても居心地がいいのであんまり長い文章を書く気にならない。
2024.01.23
ひさびさの休みみたいな日で、毛布とベッドカバーを洗濯する。あてのない買い出しに出かけ、花を2本買う。名前をすぐ忘れてしまったけれど多分3文字で、バラ科だった。そのあとは作業をほとんどせずにぼんやりと過ごし、夕方からの打ち合わせのために出かける。天気が少しだけ重たくなり気温よりも寒く感じる。
2024.01.24
打ち合わせのために集まる家、近くのカレー屋、寒さと食べ物の暖かさ、紙を囲んで夜遅くまで話した。
2024.01.25
美術館の時間が固定されていることとゆらめいている状態をとても心地いいと思った。紅葉を一本受け渡し、打ち合わせを乗りこなし、大きな仕事を一つ終える。帰り道にある日高屋で2時まで飲んだ。3時間くらいぶっ通しで真剣に話し続けたので頭がパンク寸前になっているけれど詰まっている重たさの方を大事に進んでいく。
2024.01.26
昨日の疲労を引き摺って仕事に向かう。細々とタスクをこなし、いま一番時間をかけるべきことを嬉々と進める。
2024.01.27
花を持つ人。とだけ携帯にメモが残っていた。自分が持っていたのか、持っている人を見かけたのかは覚えています。
2024.01.28
10年という時間を超えて再会と出会いが起きる。時間の厚みと、知らない表情、声の張り。やらなくてはいけないことを頭のすぐ裏側でうっすらと数えながら、ロイヤルホストで大きな声を出して笑った。店内の真ん中に案内した人はすこし後悔してるかもしれないくらい声は大きかったと思う。
2024.01.29
手持ちのタバコがちょうど綺麗になくなって、なんだか禁煙ができるような気がしてきた。そのあとすぐに禁煙はする必要がないなと思ったけれど、本数をかなり減らすことができる確信が訪れた。明日はまとめ買いではなく、一袋だけ買おうと思う。CBNハーブを買うから別に金銭的な余力が生まれるわけではないけれど、すこしだけいい気分になった。
2024.01.30
朝からいくつもの作業を進める。ここぞ、のハードルをとことん下げて何度でも発動します2024、というすこし恐ろしい心持ち。でもここ数日の働きぶりを見てそんなこと当たり前に訪れていた。昼過ぎに顔を出したら、その様子を見られていたらしく、働いている状態を見られることがほとんどない人だったから妙な心持ちになる。すでにだいぶ仲良くなっていることに気がついた。明日締め切りのものがあって、その進捗が気になって仕方がないけれど、まあ自分ができることはほとんどやったし、それで提出できなかったのだとしたらその企画とはそれまでだったんだということだろう。明日は早起きしなくていいからってそんなに遅い時間までパソコンに向かっていてはダメです。
2024.01.31
たばこの本数を減らしたという話を数人にした。一日に3本くらいになっていて、いままで付き合いやただの気まぐれ、ひまつぶしで吸っていたことがわかって不思議な気持ちになる。口の中は痛くないし、匂いのことをよく感じ取れるようになった。観劇をして、そのまま出演者の1人と渋谷まで歩いた。サッポロの黒い星、空気と混ざって温くなって味が変わったなと思ったら、オレンジみたいな味がすると言って笑っていた。ほんの15分程度じゃ話し足りず、信号を一つ逃して続けたけど何も収まらなかった。
2024.02.01
変な夢を見て目が覚めた。この前あった高校の同級生が、一年後に結婚していてそれを大きな声でお祝いしていた。最近は寒く眠りが浅いような気がする。昼過ぎから稽古場に2つ行き、冷たい風に打たれながら家に帰った。昼間の陽気に騙されて薄着で出かけたことを後悔する。嵐の天気。焼売の残りと温かいスープ、久しぶりに米を炊いて多分たくさん食べた。ひとしきり作業が落ち着いたのでぼーっと座って過ごす夜はとてつもなく眠たく、ほとんど目を瞑りながら風呂に入った。あしたはとても寒くなるらしい。
2024.02.02
運良く忘れていた打ち合わせの直前に目を覚まして眠たい目のままトレーナーを被り出席。もう一度布団に潜り、いろんなものを洗濯機に突っ込む。スリッパを洗うタイミングを間違えてしまって足が異様に冷たい。夜にラーメンを食べるかもしれない薄い約束。相談という形で電話がかかってきて、想像以上に環境が大きく変わる出来事を伝えられ少しだけたじろぐ。これで話すのは11人目です、という話出しに慌ててイヤホンをつけた。大きな天板を持ち運びながら電車とバスを乗り継ぎ稽古場へ行く。いろいろなことが決まっていくけれど、これは日付が近づいてきてるからじゃなく、生理に紐づいてそうしようとなったんだと思う。
2024.02.10
最初の二日間くらいは書けていないことをずっと気にしていたけれど、固まった背中とオーバーフローしている頭を鎮めるために少しでも早く眠るという日々を過ごしていた。毎日書くことを決めてそろそろ一年が経とうとしていたけれど、習慣が積み上げるのが難しく崩れさるのはほんの一瞬の時間だけでいい。文字を書くことができなくなると写真を撮りはじめた。一瞬でその日の記録の代わりとするにはあまりにも圧縮されてしまう写真は、スマホの登場によってだれにでも身近なメディアになった。写真を撮ることと印刷物をつくることが最近の時間の流れと手つきには似合う。ほんとうに少し前までは彫刻や塑像をやりたいと長いこと思っていた気持ちは、料理をつくることによって満たされた。べつに造形のことを気にしたり思考を巡らせながら盛り付けすることはないが、手を動かした時に形が生まれてしまうということの不思議さは一生遊んでいられる、というもっと原初的な喜びに紐づいた欲求だったことに気づいてから、紙とか平面に圧縮されてしまうことのほうに興味がある。紙は折ったらヒコーキになって遠くに飛ばせる。文字を書くことも、インクを染みさせて像を浮かび上がらせることも、いまは楽しくて仕方がない。切り取られた時間も、固定された生も、そこからまた動き出すことができることも。言葉の並び変えと、印刷された紙、シャッターによって切られた時間が再生するためのエンジン。
2024.02.15
春だ。からだを包むゆるい空気が降っておりてきた。クソみたいな世の中も人間も全員がこの風に抱かれ、中指を立てる相手もいまや頬を緩める。同じ空から降ってくる弾、激しい爆発音につづいて煙が立ち上がる。信頼できる人間だけを、という閉じた心と同時にあるそれでも外に手を伸ばし続けることで触れる場所があるってこと。
2024.02.17
流石に疲労が溜まってきている。寝ても寝足りず春の風と陽気にやられてしまう。帰り道でパスタを作ることを思いつく。大きめの皿を用意して二束分のトマトソースのパスタ。エリンギ入りナスなし。さくら味のお茶とオリオンビール。寒さを抜け出して調子にのったそのタイミングを逃さずビールを飲むこと。春の宿題。
2024.02.27
実家のマンションの駐車場にいつもいた、友達の白サバ猫がしんだという連絡が来た。車に轢かれて弱ってしまったらしい。これまで葬式にほとんど出席したことがなく、泣いてしまうような死は人生で初めてかもしれないと思う。遠くの、知っている誰かの顔を思い出す。
2024.03.15
春だね。セブンのホットドックばかり食べる生活。完全に衣替えに乗り遅れて誤魔化しながらほんのり薄着に乗り換えていく。Olive Oil のトラックにくらうバスの中。一ヶ月前から毎日薬を飲んでます、花粉の。フォームを崩してるよねと言われてからちょっとずつ取り戻して形が変わってきてる。環境が変わる年になる、という確信は周囲のことだけじゃなくて自分の心持ちも含めたものでしたね。この一ヶ月は新しいノートと細めのボールペンを手に入れて、どちらも無印ですが、そこに日記というか文を書いてたので日記自体は別に久しぶりみたいなことではないんですけど、SNSはもうほとんどやめた、と言ってもいいくらいです。べつにアカウントも残っているし投稿もしているけどあれは宣伝ですよ。春が味と香りを連れてきたのでまあそんなことばかり考えています。食べ物の形に落とし込めるんでしょうかあと数日。印刷物、構造、感覚、文字、音、食べ物、いろいろありますがない混ぜにすることはなく一個一個、でも全部同時に触れるといいですね。いま急に読みかけの日記本のことを思い出しました、家に帰ったら開く。
2024.03.18
鳩の巣を見つけました、姿は見ていないけれど鳩が枝をくわえて入っていく高架下の梁の向こうにはたしかに巣がありました。風が強く首元をずっと冷たい風が通り抜けます。重ための体を引きずって、何もしたくないはずなのに体は動く、なんでこの足が前に進んでいるのかわかんなくなってああこれはあのときも似たようなことがあったな。目元がずっと気になって疲れをそこから実感するなんてね、知り合いは耳が聞こえなくなったって。
2024.03.19
日々目まぐるしく動き働き続けて文字通り目眩がしました。一つだけ仕事をすっぽかして、とりあえず連絡を返しといてセーフ。移動しながらカレンダーを整理しています。現在がパンパンで現在形でしか書けないんだけどそれはひとつの試み、カレーに誘われたけど行けるかどうか。会いたい人に会えないでいるのは3月だね。血が出る捨て方。
2024.03.25
くるものを捌くばっかりじゃあ難しいですねなかなか。同時に動かすってやつを実感を持ってやらなきゃいけないんです。昨日の夜から急にみぞおちあたりがへこんじゃって、お腹が空いてる時に咳をいっぱいしすぎました、普通に今は鼻の奥が痛いので風邪ですかこれ。葛根湯のんで寝ることを約束してね、体力も下り坂なんだとしたらラーメンとか食べるといいかもね。帰り道のラーメン屋に寄るってことは約束じゃなくて誓いです。春なので体調をくずしがちですか、ぼくはそうです。明日も雨なんだとしたら部屋にたくさん干した洗濯物どうすればいいの。パソコンをカタカタする速度がどんどん速くなってますがこれは仕事のしすぎってサイン、ちょっと指の動かし方忘れるくらいがちょうどいいはずだよ、昨日の夜右手が痙攣してたって内緒ばなし。でもなんかまあ、夜遅くまで仕事したり話し込んじゃったり飲んでばかりいるのはどうしたって3月という感じです。明日から春の味をさがす時間です。
2024.03.29
朝起きたらほぼ台風だったね、風も雨もザーとかなんとかいって包んでますこの部屋。真っ暗だしもう引きこもりの気分だった。関西風のたまごサンドつくって頬張る。昼過ぎたら急に晴れて戸惑いました。春の眺め。変な気が起きて徒歩で買い物にいって、帰りにパン屋によってむしゃむしゃしながら13分くらいのところ15分くらいで家。春はあたたかくて明るいので夜の暗さのことも同時にすきになれる。夕方から干した洗濯物はまだ外。こういう日にはちゃんと外でビールを飲むっていうノルマを達成しなきゃいけない。仕方ないけど一人で。
2024.04.06
桜があちこちで咲いてますね、ここ数日の雨で一気に散ってしまうんじゃないかと思っていたけど雨はやさしく、むしろ寒さの方が気になってばかりです。セザンヌの稽古初日。選択のペースは二日に一回になりました。隙間隙間で打ち合わせをしながら、同時にいくつものことを考えて、防火水槽の後ろに満開の桜をぼんやりと眺めたりします。紅葉の葉っぱがどんどんでてきて変に伸びただけじゃないかっこよさがあります。服の詰まったリュック、深夜まで閉じられない目。ポツンとした畳の部屋の匂いの中で少しだけ休憩するのは別に早くついてしまったとかではなく狙って生まれた準備の時間。
2024.04.09
目が覚めたら風と雨がすごくて台風かと思いました。桜がほとんど散ってしまうんじゃないかという不安が募りますか。うん。ちまちまと仕込みをして、知床からこんにちは。SurvivaL HERBSと書かれた三角の包みをもらう。適当に蒔くとその土にあったハーブが芽を出します。終わったらすごく眠いけど打ち合わせと積み残しの作業がたくさんありますね。おろろおろお。家にいる方が寒いね今日みたいな日は。
2024.04.13
外に出たら暖かいですね、春風です。鼻がむずむずするくらいのぬるさと気持ちよさが首筋を抜ける。忘れ物をして一回止まったけどまあ今日は大丈夫かと思い直して進む。え、お腹の調子終わってんな。今日はちゃんと米を炊くことに決めました。
2024.04.14
昨日炊けなかった米を炊いた。とても暖かく、全部の洗濯物を回す。床の雑巾掛けもした。
涙を流しながら展示から帰る人、階段の下から啜り泣く声が聞こえる。するすると流れるような時間を過ごして話して気づいたら1日が終わってたね。
2024.04.15
季節を間違えたかと思ったけど外の匂いは新学期のほこりっぽさが混じってたね。うれしくなった。イヤホンの充電はいつも忘れがちだね。
2024.04.16
うまく起きれませんでした。印刷に出かけて思っていたよりたくさんの紙を送り込む。ここが無くなると輪転機使えなくなって困るな。Hand Saw Pressとかを気軽に使えるようになりたいですね。久々にご飯つくる。人に食べさせていたメニューと、何も考えないでつくるものを自分のためにつくるところから取り戻していく。花を買って帰ろうかと思ったけど選べず、もらうだけの日でした。
2024.04.17
深夜の電車で眠りこけて携帯を落としちゃった人、その前に立つ女の子がそっと手の位置に戻してあげてしばらく気にしている姿がとてもよかった。
2024.04.25
晴れると気分も晴れる単純さの中に自分のからだはいます。つつじの甘い匂いがしますね。庭のもみじも青々として、もう日差しが夏になっているけれど気温がすれ違っています。最近は時間ではなくてお腹が空いたら食べることにしていて調子がいいです。朝からとりあえず全ての窓を開けて部屋に篭った湿った空気を入れ替えます。
2024.04.27
たまごサンドを食べるといつも口の中を火傷しますね。壁の向こうからうたの練習が漏れ聞こえてきている。
うちのベランダが一匹のキアゲハの蝶道になったようです、11字ちょっと前に、少しだけ円を書いてまたどこかへ飛んでいきます。
2024.05.11
帰り道に31ができてて夜中なのに行列ができてました。風が強く飛ばされそう、背よりも高いドウダンツツジの切花。
2024.07.18
まるっと2ヶ月ぶりに書く。朝からそうめんを茹で、あまったキャベツを味噌で煮込んだものを味にすする。気がつくと夏がすぐそこまで来ていて、すっかり季節の変わり目のことを見逃してしまった。梅雨が一瞬で過ぎ去ってしまうようになったのはここ数年のことのような気がする。小学生の頃は雨が憂鬱で仕方なかったけどいまは防水の靴とかズボンを履けるようになったのでだいぶ過ごしやすい。溜め込んだ仕事をぼんやりと進め、同時にぼんやりともしてられない状況を、ただ流れの速い川をぼぅっと眺めるように過ごす。本番が終わり、どうにも背中が板みたいに固まってしまったので銭湯に行きたいと最初に思ってから4日くらい逃し続けていたので今日は何がなんでもと自転車を漕ぐ。帰りに八百屋と西友に寄って、いつの間にか2つで390円になった桃を3パックと、ホワイトリカーを買って帰る。力の抜けた体は生ぬるい夕方の空気に包まれていて、自転車のハンドルに下げた桃が車輪に当たって弾けてしまう想像をなん度もした。楽しい約束を一日一ラリーで進めている、あと7ラリー。今日はたくさん水を飲んで、すこし日付が変わった時間ごろに眠る。
2024.07.19
久しぶりに午前中に予定がなかったのでアラームをかけずに眠ったら11時ごろまでコンコンと眠った。昨日銭湯に行ったので背中と肩がいくらかマシになった気がする。本番期間中に母親からお歳暮として届いた鰻を解凍し、素麺と一緒に食べた。全体的にゆっくりと動いていたら打ち合わせの時間になったのでオンラインミーティングのリンクを発行し待機する。自分にできることと、この組織にいる以上できないことをドライに考え続け、泣きじゃくって伝えられる言葉を受け流した。この人の人生にとってこれからの3年間がいいものになるといいという純粋な気持ちと同時に、責任は取れないことを真摯に伝えた。前の職場の劇場がなくなってから、自分だけではなく誰かの時間を使うことについて直面し続けていてそこでの振る舞いについてそつなく進んでいることに何の疑問も持たない自分がいる。自分はこういう星のもとに生まれたのだということをごく自然に受け入れていることに気が付く。
明日から自分は出ない本番があるのでその準備を進め、同時に迎えるいくつかの現場での動きを考えていたら、どうにも働きすぎている気がして冷えた床で横になった。ちょうど今日の夜に予定されていた仕事が体調不良によって休みになる連絡が来たので、その返信を手短に進め目を瞑った。夕方の昼寝はだいたい悪夢か、体調の悪化をもたらす。45分ほどで目が覚め、今日はエアコンの風があたる位置で眠ってしまったので喉の辺りに違和感ができてしまった。水分が足りていない。
寝ぼけた頭で今日やるべきことをとりあえず済ませ、ずっと気になっていた深夜まで営業している
喫茶店「珈琲杖」へ行く。まずはひとりでくるのがいい、とお店側が言っていたのでそうした。一軒家の一部を改装したような部屋はちょうどよい暗さで、本を4冊持っていってよかったと思う。華やかな香りのするチャイナとテリーヌを頼み、誰もいないうっすらと音楽が聞こえるだけの部屋、時々大きな車が通って家自体が揺れることも心地よく、背筋を伸ばして読み進める。
お腹が空いて店を探しながら自転車を進めたら見つけられず結局日高屋に吸い込まれた。駅前のロータリーには名前も知らない大学生たちがたくさんいる。2匹の大きなゴールデンレトリバーが笑顔のまま囲まれていた。涼しいと感じるくらいの風が耳の裏を通る。こんな日はビールがいいね、と誰にともなく話しかける。いつもよりひとりでいることに納得した夜を迎える。
2024.07.27
全部の準備を整えて、最近買ったROLANDのスピーカーから音楽を流してぼんやり過ごす。窓越しにベランダを見て、お客さんが来るのを待つ時間、ミモザがこの夏でどれくらい伸びるのかを少しだけ想像する。タバコを吸う。窓を開けて、クーラーの冷たさと外気の重たい蒸し暑さのあいだにいる。遠雷。眠る前に空が明るくなっているのが一瞬見える。寝息に変わったのを聞いて安心して眠る、ずっと半分起きてて半分寝てた。
2024.08.03
お気に入りのパン屋はしばらく行っていない間に19時以降の立ち飲みをはじめていた。いつもパンを並べているカウンターを空けてワインが飲めるという。そう遠くないうちに夏の夕涼みと称して飲みに行くだろうな。パンでいっぱいの紙袋を抱えて公園に行きボートが行き交う池を眺める。昼寝。中野に演劇を見に行って、やっぱり今日立ち飲みに行ってしまおうかという気持ちをグッと抑えて家にもどって作業をする。しばらく硬直していた作文がすこしだけ進んだ。
2024.09.28
昨夜は白ワインを飲んだのでぼんやりと長く眠った。ここ数日はたくさん夢を見ている。お店の残り物を寄せ集めて陽気な朝ごはんを作って食べる。ポテトサラダもチーズもパンに載せるとまた違った顔になる。Juhaのコーヒー豆を久しぶりに買ったので淹れる。匂いも味も無印のものとは全然違う、無印の浅煎りは毎日飲むにはとてもいい。疲れてはいない。ここから三日間の日記をつけるように指示があった。もうしばらく書くことをやめていたのでこれを機に再開できるといいなと思っています。読みかけの本がどうしても再開する気になれず読み終えた本棚に一回送った。ここ2ヶ月で一気に本を読めるようになってこうやって緩やかに変わっていく部分をほとんど見逃しているなと思う。Red bull 64barsのDaichi Yamamotoが強烈に良すぎて何度も再生する。
昼過ぎに出掛けて仕事へ行く。重たい打ち合わせ、一気に前向きな気持ちは消える。しかし前を向いてやっていくしかないという思いも同時に入り込んでくる。9月29日、強張りと悪態、久しぶりに大きなため息がいくつも出た夜でした、こうやって覚えておくことからはじめるし、何度だって声をかける。
2024.09.29
ちゃんと目が覚める。かなり気温が下がってきていてこのままずっと布団に収まっていたい気持ちが日に日に増している。朝から打ち合わせを一件、昨日のことが脳裏に掠めながら明るく話を進める。今日の夜、バスに乗って京都に行く。横になれないことを想像すると少しでも長く横になりたいと思って潜り込んだら夕方になった。いくつもきている連絡を返せないままYoutubeのショートを流し見する。流石に寝ていることも疲れてきたタイミングで、急に思い立ちご飯を作る。冷蔵庫に残った食材をかき集め、自分が食べるためのものを作る、この2ヶ月くらいそんなことを全くしていなかったことを思い出す。熱のある食べ物が喉を通ると戻ってくる何かがある。タバコをたくさん吸ってしまっているけれど今日は許す。
2024.09.30
5時に京都についてネットカフェに入る。横になれる部屋を選ぶ。目を瞑りうすく伸ばされた眠りにつきながら、天井の配線とコンクリートを見ていた。
この日、自転車に乗って、全く違う時間が堆積した場所を駆け巡りながら、すぐそばで蝶々がずっと飛び交うイメージがある。ミルトン、ディスコ、ニカ、名前がついた乗り物。うっすらとした影がずっと重なっているような感じがする。夜行バスの疲れからそういうイメージになっただけかも。
いくつかの施設を回りながら、知っている場所、知らないとこ、住んでた家などを回る。知っていることと知らないことが重なっている。
夜、真っ暗になる。闇に溶ける、遠くに見える山が怖いという感覚を長崎にいたときも感じていたかも。水の音はずっと聞ける、橋の向こうに流れていく鴨川、繁華街。一瞬で蜻蛉返り、まったく断片的で一日で起きたことじゃないみたいにして帰った。
2024.10.01
朝7時くらいに家に着いて、そのまま11時まで眠った。あまり脚が痛いとかは思っていなかったけれど流石に疲れていたのだと思う。ずっと外にいて陽に当たっていたし、お風呂にも入っていなかったのでTシャツが汗を吸って流石に重たく感じるほどだった。昼間から稽古、自分が住むエリアで稽古する機会ができ、なんだか不思議な気持ちになる。吉祥寺にもこういう場所が、しかもこんな通りにあったことなんて知らなかった。
2024.10.02
みんながそれぞれに一つの場所について話している。その豊かさに今まで本当には気づけていなかった自分だった。なんで遅れてしまったんだろう。いつだって状況は変えていけるはずだった。欠けていたはずの声はもっと遠くまで届けることができたのかもしれない。
新しい部屋をイメージする、そこにはダンボールがあって中に何が入っているかを決めていける。平面しかイメージができない人、真っ白いキャンバスは怖い。アジールのよう、と何の躊躇いもなく言えること。はぐれものたちが集っていいとされる場所、誰にとっても自分の場所だった、よくわからないことの良さ。ルーズさを真面目にやること、遊びへの変換。そういう重なりから生み出すことだってできたはずだったし、別に遅くない、ここからもう一度取り返すことができるはず。
2024.10.03
朝はうまく起きれず、洗濯機を回したり水を飲んだりしながら打ち合わせをする。みんながそれぞれスッキリした頭とぼんやりした頭の半分半分で集まっている。1時間程度で終え、いろんな計画的に今日はもう何もできない。オンラインが続いていてしんどくなってきたところだったので運良く吉祥寺でお茶をすることにし、2時間くらい話を整理しながら今後のことを考えた。どういうわけかこの状況に入り込んでいるし、そうなった以上はやり遂げるという確認の頷き。
家に戻ると妙に眠気がして、そうか今日は雨、連日の疲れもあってか寝る。アラームは全く機能していない。綺麗に食べ切ったテーブル、料理を口に運ぶための箸、多めに飲んだお酒、返せない連絡、雨が降ったことがわかる道路。今日は視界が開けていて、薄い線のフレームで丁寧に囲うように時間を過ごした。お酒を飲んでも頭も脚もだるくならないので気分がいいけれどまた明日から動きが再開する。つかの間の安息日、イメージを超えた絵画、呼ばれない名、おやすみ。
2024.10.04
植物の返却のために車を走らせる。家が空っぽになった。家のではない植物がいる生活が2ヶ月近く続いていたので妙に部屋が広く感じる。その間に自分の植物は枯れてしまった。いまは外にミモザとコブミカン、もみじがいる。コブミカンにはアゲハ類の幼虫が3匹ほどいて、ミモザにはキチョウ(名前の通り黄色い小さな蝶々)の蛹の殻がたくさんある。
昨日のことがこの前という言葉で指されるくらいに時間の感覚がおかしい、緊張で内臓が凝り固まっている、ゴキブリが出ても動じずに殺せる、宇宙ステーションのドッキング、名だたる条約の締結のイメージ。
2024.10.05
朝から橋本さんと高円寺のデニーズに行って作業。京都公演に向けての作業を洗い出し分担して整理する。最近オンラインが続いていて頭がぼわぼわするから対面でやろ〜と言って正解だった。一通り終えて、バストリオハウスへ。今野さんのインタビューを録るという名目で2時間くらい話をする。今考えていることを聞き出したり、それに答えたり、いま積み重なってきていることについて聞いたり交換したりする時間。今まさに声が吐き出されていること。イメージの捉え直し。狙うことも狙わないことも、肩を並べることも、同じ景色を見ることもできるしできない。最近は文章にすることが難しく言葉をただ並べているような感覚になる。それをうまく集中して繋ぎ止めれば詩になる。
2024.10.11
どうしたら生活のいろんなことを取り戻せるかわからなくなってしまった。朝は相変わらず起きられないので昼過ぎに動き始め、録音した音声の編集作業を進める。途中で近所の喫茶店にカレーを食べに行った。戻ってきてからも編集作業と音源制作。ときどきくる連絡を返しながら、いま目の前に何もないみたいな気持ちになった。時間が足りていないのかもしれないし、基本的に切迫している状況にあるような気がしてよくない。今日の夜行バスに乗って京都へ行くので帰ってきたらまた何かしら切り替えていけると良い。また、京都のぼんやりと引き伸ばされた時間に触れる。
2024.10.12
夜行バスで京都へ。運転がとても上手でまったく目が覚めなかった。金曜日の夜に出発すると、土日限定でサウナの梅湯が朝風呂をやっているのでいつも行く。おおきな水の塊の中にからだを包めると疲れとは別に安心がある。家ではシャワーだけなのだけどたまにはお湯を張ったほうがいい。六曜社でぼんやりとした頭のまま本を読み進める。ついぞ手に取った平倉圭『かたちは思考する』は、冒頭ですでに最近考えている「イメージ」についての視座に新しい言葉を与えてくれる。一方で、このことは感覚的にたどり着いていた話でもあるという気がしていて、本を読むときはいつもその感覚が訪れるので不思議だ。待ち合わせの時間まですこし間があったので鴨川に行き、からだを引きずるでもなく、前進するでもなくぼんやりと歩き座る。鳥が多い。鴨、白鷺、川の流れに潜りスライダーのように何度も降ったり登ったりする鵜、かわせみ、かわせみはとても小さいのにとても青かった。背中と羽が陽に当たってキラキラしている。川の中には魚、向こう岸には自転車や手を繋いで歩く人。ワンショットがとても豊かで、ここにすぐアクセスできるということが住むということなのだとしたらそれはとてもいいことだと思った。
夕方からトークイベントをやり、ずっと見えない引力と見える(見えない)顔や手のことを考えて過ごす。歩いてご飯を食べてまた歩いて宿へ行き歩いて銭湯へ行き歩いて帰る。お酒ものんだ。京都は案外猫が多い。
2024.10.13
眩しい。明るい。広い。ずーっとそのことが裏側で聞こえている。今日はワークショップの日、少し早めに会場に行ってそれぞれ作業をする。途中で寄り道したパン屋はとてもいいクロワッサンを置いていたけど店の名前は覚えていないし、同じような店がたくさんあるのでもう辿り着けない気がする。
集まった人たちと散歩をする。子育ての話、東京と京都、それからもっと別の場所や国のこと。鴨川に行き寝そべった。今日もとても豊かなワンショットが流れていた。女性同士で手を繋いでいる人たちがいて、人が少し増えたから自然と離れて、そのまままた自然に手を繋いでいた。こういう一部と全部をちゃんと覚えておく。
夜はワークショップに来てくれていた髙橋さんも交えてご飯を食べた。有名なとんかつ屋さんに行き、たくさん食べた。お腹いっぱいのまま帰宅、コンビニに行くついでにしばらくバス停に座ってタバコを吸う。旅先だからなのか、この場所だからなのか、東京でもきっとこういう時間が流れるんだろうけれどどうしても働いたりする場所だと思ってしまっている。自分の中のイメージを引き剥がすこと、そこからまた違う隙間を見つけて広げていくこと。湯あたりしないように早く部屋に戻る。
2024.10.18
朝からアゲハの幼虫が走り回って、これが聞いていたサナギになる前のあれかと思って見失わないようにしながら洗濯や掃除や仕事をしてずっとソワソワしていた。ブロック塀の向こう側へ行こうとしてしまったのを枝なんかを置いて進路を変えてなんとかベランダの中で落ち着いてもらうようにする。なにしてるんやろうと思うと同時に、でもここの方が安全に孵化できるだろうという思いもある。コブミカンはだいぶ食べられてしまった。3匹中2匹は見逃してしまってどこかに行ったので、せめて1匹だけでもという気持ちだった。
2024.10.19
朝、まったく起きる気になれずぼんやり横になっていたら昼の予定に間に合うかギリギリになった。洗濯物を回さないといけない、今日は雨が降らないだろうと思い外に干す。昼からひとつ演劇を見て、そのまま神保町へ行き仕事をする。初回の授業は和やかに進んだ。感想を少し伝えたりしながらタバコを吸って、頭の中では常にやらなきゃ行けないことのタスクの数を数えていた。神保町ブックセンターで待ち合わせ。久しぶりと行ってしばらくバラバラになって本棚を見る。本を読めるようになってから、本棚はとても社会や政治と結びついて顔を変えているなということに気づいた。近況報告をして、お酒を軽く飲んで、すこし遠回りして駅まで向かった。中央特快に乗ってしまったので同じく四ツ谷で降りて同じ路線の違う電車に乗り換えた。ベランダのアゲハはもうサナギらしい形になっていた。洗濯物ギャンブルには負け。
2024.11.07
京都での公演が終わった。習慣で目が覚めるようになってしまったので軽く家のことをすませ、軽い打ち合わせを終えたら、今日まで休もうという気持ちで寒さに任せて布団に潜ったままにした。気づいたら眠って夢を見た。夕方から出かけてスペースノットブランク『光の中のアリス』を見る。訳がわからないまま興奮する時間、戯曲の言葉がそのまま耳に届くことの良さを噛み締めた。東京は知らないうちに気温がとても下がっている、明日衣替えをして、今日寝る前に掛け布団をもう一枚準備しよう。夜は渋谷の街を歩いて偶然見つけた良さげな中華へ。本格的な中国茶で淹れたお茶割りしか飲みたくない。味付けがどれもよく、海苔たっぷり炒飯は本当に海苔がたっぷりだった。さらりと解散して家へ。今日はあんなに寝たはずなのに寒さからか布団に入ったらすぐに眠った。
2024.11.08
今日は仕事をどんどん進める日、と決めながら午前中はエアコンのフィルター掃除。一季節でこんなに埃が溜まるんだと毎度のことながら驚く。一日一箇所ずつ綺麗にしていこうと思う。滞らせていたものを一気に片付けて、書き溜めた日記と詩の整理(のはずが、書き溜めたメモを見ながら思い出しながら日記書くことがどうにも許せなかったので全部消した)。お店のメニューを全く考えていないことに気づいて焦る。そろそろプリンタ−が家に欲しい。印刷物へのハードルをどうにかして下げられるといいのだけど。11月が終わったらレシピを作るし、来年はどこかスペースを借りてコース料理の提供をするイベントを開きたいし、またプライベートパーティーという名前をつけた催しをやってもいい。自分の身体の周りから考えられること(それはほとんど生活のこと)を触るところから取り戻そうという気持ちがある。夜は買い出しに出かけて3つ打ち合わせをする日。
つづき
夜は打ち合わせを乗りこなしながら転蓬に向けて仕込みをする。ぼんやり考えていたメモを見ながら構成を組み立てる。今月はちゃんと秋が訪れて土の匂いがする。いくつか決めきれなかった部分は八百屋を眺めながら決めました。2種類のお茶を入れて冷やしたのが仕込みのハイライト、今月から茶割りを導入します。
2024.11.09
1箇所ずつ大掃除をしている。トイレの隅っこ、窓ガラスの水拭き、いつもが見逃している小さな段差の埃。毎日掃除はしているけどちょっとずつ部屋が綺麗になっていくと年末の趣がある。衣替えと布団を増やしたときに出た埃もほとんどいなくなった。ここ数日は咳とくしゃみと鼻水が止まらないので困っています。ほこりのほかにも寒暖差アレルギーっぽさもあるので厄介ですね。仕込みと買い出しの続きを済ませ残りの作業を確認して、お裾分け用のジャムを持って出かける。
昼過ぎからバストリオの機材整理。ここでも埃がすごくてくしゃみは止まらない。ケータイで適宜員数を記入しながらこれまでなかった一覧できるリストをつくるためにいろいろ確認する。15年もやっていると物理的にも蓄積があるということを手を動かしながら考えていた。なにかがまとめられたり整理されていくことをとても好きに思っていることがよくわかった。
終えてそのまま下北へ向かい45分だけ集合、缶ビールを一本だけ空けた。吉祥寺へ行き打ち合わせ兼飲み会。
2024.11.13
こういう時こそ日記を書くといいよ。11日の夜の集まりから急ピッチで、ほとんど殺意としか呼べないそれを使って、殺意といってもこれは比喩で本当は誰も死んではならないけど、ただ集団の利益とか上手くやることとかじゃない個人的な怒りととにかく終わらせるという強い気持ちで動いている。毎朝毎晩のミーティングに消耗して心と頭を奪われないこと。無理になったら無理と言える人がいることを忘れないこと。相変わらず自炊はほどほど、お米を買いたい。また明日は別の仕事、明後日も別の仕事、切れない糸。
2024.11.14
芸能人のインスタをたまたま見かけてこの人こんなに綺麗な鷲鼻だったんだなと思う、テレビは常に正面から捉えているんだなというどうでもいいことを思う。夕方下から臨時の制作バイト。10代の子がつくった夜の街を歩くプログラムの警備帯同スタッフ。日比谷公園の中を通ってから芝公園に向けてさまざまなゲームなどで遊びながら、ごく個人的な集まりによる集合で街を歩く。途中、カフェのテラスを借りて、ペアで似顔絵を書いてサインをつけて相手に送ったあと、テーマソングに合わせられて作られたTikTokライクな踊りが街中の道で起きる、同じ振りをなんとかシェアする。道端に舞台を作ろうとするのではなく、個人的な関係の積み重なりでのシェアを通して、本当にすんなりそこが舞台になることに感動していた。この仕事を機に久しぶりに会えた人たちがいて、状況を共有して、今後もまた近いうちに会おうという約束をする。
2024.11.16
昨夜3時過ぎに眠り、9時ちょっと前に目が覚めて、また集合。これで一区切りになる。種子島のロケット発射を見送る気持ちだね、とGIF画像が送られてきて、メールを送信した。
一旦終えるとどっと疲れが押し寄せてきて、洗濯物を回し部屋の片付けをしていると、これまで切れなかった集中の糸がゆるみ、1.3倍速で動いていた地球が等速に戻る。合流して、どうしてもここ数日の寝不足が難しく、作業をしている横で1時間ほど眠る。母親から届いた仕送りを自慢しながら開封して、西荻窪までカレーを食べに行った。前々から気になっていたCAFEオーケストラに入り、サグチキンカレーとチキンカレーを食べる。初めて食べる感じのサグカレーで、本当にほうれん草をスパイスで煮込みました、という顔をしていた。一口もらったチキンカレーはとてもシャバシャバで見た目は全然違ったけど、同じようにスパイスで煮込んだという顔をしていた。カレーという食べ物を捉え直し、カレーをつくることは「スパイスで煮込むこと」だと思っているんだという作っている人の考えが食べ物を通してわかってきて、食後に出てきたチャイもそんな感じがして、とてもおいしかった。
2024.11.18
正装であつまるといっていたなと直前に思い出して、ここ数日は何も考えずに選んでいた服をちょっとだけ慎重に選び、それでもほとんどいつもと変わらないのだけどzoomを繋ぐ。ほぼ毎日画面越しに顔を合わせた。朝から首尾よく段取り通りにメールの送信などを行なってみんなで労をねぎらって解散。ほんとうに疲れた。
お腹が空いている気がしたのと、タバコを切らしていたことと、生活の消耗品がなくなったタイミングもあって買い出しに出かける。三鷹まで自転車を漕ぐ。無印良品でトイレットペーパーとかを買い揃えて帰宅。久しぶりに後頭部を殴られたような強烈な眠気に誘われて昼寝、気づいたら2時間寝ていた。
目が覚めると案外何事もなかったかのような気持ちになっていて、別の仕事を進め、夜のミーティングに向けて整える。今日はずっと外で風が強く吹いているので厚着をしたほうがいい。
2024.11.30
しばらく溜まったメモを見返している。思い出したり見返せば日付を書き込むことができるけれどそうすることが少し億劫なので、今月最後の日にコピペして加筆する。
布団の中に入っても口から吸い込む空気によって身体が内側から冷えるという話を聞いた。温かい空気に触れている皮膚と、冷たい空気が触れている気管支。自分がご飯を人に食べさせるときに感じる、「内臓が外付けされている」という感覚に似ていると思った。
渋谷のサイゼリヤは限界まで席を増やしていて学食みたいになっていた。サイゼリヤと書くときいつも「ヤ」なのか「ア」なのか少しだけ迷って、しばらく前にインターネットで見た、なかやまきんに君が「サイゼリヤー!」と叫んでいる画像のことを思い出す。食べ終わってももう少し時間を過ごしたくて、せっかく渋谷にいるからと前の職場だった劇場を見に行く。解体は始まっていないらしいという噂は聞いていて、本当にそうだったけれど、斜め向かいの空き地には家の基礎が建ち始めていた。解体が始まったらしいという噂を聞いたらまた見に行くと思う。OMSBの『HAVEN』というEPの最後の曲、『A FEW FRAMES』を繰り返し聴く。残高は一瞬3桁になった、冷蔵庫に眠ってたハイネケンの缶を空ける、いつになくまずい気がするタバコ、肩の位置を少しだけ後ろにすることで楽しそうに笑う。
ワワフラミンゴ、はじめてみた。出演者の青木さん(後で調べてわかったけど俳優ではなくミュージシャンだった)が途中、一人長く歌う時間があってもっと続いてほしいと思った。脈絡のない展開と日常のヘンテコ(と錯覚するやりとり)。コントのようにも見えるし、日記のようにも見えた。途中、クロワッサンの話が出てきて妙に納得した気持ちになった。層を重ねながら、どんどん先に進んで膨らんでいくイメージ、口にしたら一緒。
2024.12.01
月が変わった。昨日の日記は溜め込んだメモを書き連ねるだけでその日あったことを書けなかった。今野さんに会って今後に向けての話と一年の振り返りを話したんだった。「損傷」という言葉が浮かぶような年だったなと思う。そんな一年があと一月で終わる。
朝は相変わらず起きられない。TABFに行き、青柳さんの最新の詩集を手にいれる。たくさんの人で歩くだけでも一苦労だったし、出店しているみんなも最終日ということもあってかぐったりしていた。印刷所の出店コーナーで、リソグラフ印刷されたA3のポスターも買った。トイレに飾るなにかをずっと探していたけど、絵よりも幾何学のカラフルなインクは今の気分にとても合う気がした。ぐるっと一周する間に目に止まったものはリソグラフ印刷されたものが多く、紙媒体への好みも自分の中にあるのだなと、冷静になれば当然のことのようなことを考えながら、最初は美術館で展示を見るように、後半は市場で買い付けを行うような目で歩いていた。
今日は少し暖かかったからかくしゃみがよく出る。お酒も飲んだし、居酒屋のだし巻き卵が異様なくらい美味しかった。突然ご飯の誘いを受け首尾よく日程調整と場所まで決めた。何を話すんだろう。夜はすこしだけ電話をしてトラブルの詳細を聞いた。とても大変そうだけど、きっといい方向に行きます(断定)というなぞの明るさの声かけをする。明日から現場が始まるので持ち物の準備と作業の確認をして、もうそんなに早いとは言えない時間に布団に入った。
2024.12.05
『まよかげ/Mayokage』の初日が明けた。こんなに健康的な現場はここ最近そんなにないなというくらい、準備にもゆとりがあり、ただお客さんを入れることに緊張するという時間の方が長かった。途中、休憩で散歩に出かけたら、柴犬と左右どっちに通る?をするお姉さんを見かけて、その人とすれ違うときにちょっとだけ長い時間目があって恥ずかしそうにしていた。駅前の野原の花束を買う。1,000分でと伝えると、とてもサービスしてくれてもりもりの花束になった。なんども、これからは乾燥させてリースにするといいよと教えてくれた。冷え込む夜が増えてきていよいよ冬が訪れている。三日月と金星がはっきり見えていい季節だ。
2024.12.07
昨日の夜、配信終了間際の『AKIRA』をみた。音と映像の色がとても好きで、もう直ぐ配信が終わるというのにところどころ戻って見返したりしていた。
今朝、駅前で信号待ちをしているとき、カーブになっている角のあたりに立っていると、『AKIRA』でみた血の色のことを急に思い出した。事故の映像がちらつく感じの、別に実際にそういう現場に立ち合わせたことはないけれど、カーブに突っ込んできたトラックに身体が突き飛ばされる想像。東京で暮らしているとその感覚が時々こびりついて離れない時があるけれど、『AKIRA』をみたことでその瞬間が訪れてしまったような気がする。別にまったく落ち込んだり疲れたりしていない。
下北沢について、指定された場所で隠れてタバコを吸っていると、向かいにあるマンションの一階、窓を開けている部屋の中が見えた。換気扇の前に立ってタバコを吸っている男の人がいて、マフラーをしていた。出かける前なのかもしれない。向こうはこちらに気づいていないし、柵も隔てていて別の場所にいるのに見えているからそれは同じ場所にいると言ってもいいのではないかという気がする距離感で、同じ方向を向いてタバコを吸っていた。明日で下北沢に通うのは終わり、BONUS TRACKはとてもいい場所で座れる場所が多いことがポイント。集まっている人たちも、単におしゃれなものがすきな人だけではない、すこしサブカルの匂いを引きずっている感じがしてとても居心地が良かった。明日は日記祭がある。
2024.12.08
最近よく夢を見る。話の内容を覚えていると言うより、輪郭のはっきりした画面、でたらめなシーンの連続を見ていて、目が覚めたときそれがどこから来ているイメージなのかはよくわからない(『AKIRA』の色味に似ているけれど見る前からその夢のサイクルが続いていたので多分違うと思う)。
下北沢での公演は今日で最後。お昼に食べたビーガン料理は言われなければわからないくらいに美味しくお腹を満帆にした(麺だけは卵が使われていないからかすこしパサパサしたけどパサパサした麺も好きなので全然良かった)。合間の休憩時間に日記祭に行き、いろいろと見て回ったけどあまりどれもピンとこず、絶対に買うことが決まっていたブースへ行き、軽くおしゃべりをした。『なにも食べれていません』と『盛況です』が同じ声で伝えられた。実物で見た日記本はとても色がよく、これを受け渡すその日に向けて準備していた様子を見ていたので本当によかったという気持ち、読むのがとても楽しみ。
演劇の片付けはさっさと終わり、今日はとても風が強く冷たい日だったので家について先に部屋を温めておくといいと思って、飲み会を早めに切り上げて帰る。今日買った日記を読みながらそれを書いた人の帰りを待つ。ぼくがまだ日記を読んでいると、『日記じゃなくて、』と言われて思わず笑ってハグをする。それからは今日の出来事をたくさん話してくれて、ぼくはその熱をじんわりと受け取る。昨夜と昼間に会ったときはほんとうに呼吸が詰まっていたんだなとわかるほど今ははっきりと息を吸い込んで声になっている。昼間会った時は言えなかった(言わなかった)誕生日を祝う言葉を伝えて、だいぶ遅い時間に眠った。
2024.12.09
休み。まだベッドでゴロゴロしているのを横目に洗濯と掃除を済ませて渋谷に向かった。待ち合わせはハチ公の目の前にしましょう、と言って、記念撮影のために列をなしているすぐそば、本当に犬の目の前で立っていたら、ちょうどそこに現れて落ち合う。いつもONの状態でしか見たことがなかったので、平常だとこんなに声が小さいのに真っ直ぐ喋るんだと知った。タバコが吸える喫茶店に入り、私は苦いやつをと言ってたのんだコーヒーは本当に苦く京都みたいやなぁとまた小さい声で言っていた。相談したいことがあると聞いて、いくつか候補が浮かんだ中で一番確率が低かった話をされて、とても喜んだ。電車に乗っている間に嬉しい結果通知も届いていたし、新しい仕事の依頼も来た。この半年というか一年、ずっと屈んでいたのでジャンプしている(!)と感じられる今年の中では珍しい日だった。もう今年の振り返りと来年(ともっと先)の話をする時期になった、年末だ。
吉祥寺に戻り、近所で一番美味しい定食屋に行ってラストオーダーギリギリに滑り込む。ほとんど選べない中でも真剣に悩み決めたカレイの煮付けは当たりだった。家に帰りお茶を淹れ、ぼんやりと話す時間。部屋は寒くなったりあったかくなったりした。
2024.12.10
遅刻しないギリギリの時間まで二度寝。最低限の身支度を済ませ、タバコだけ吸う。部屋が外と同じ気温になっていて、だけどつらくない冬の朝だった。家を出て駅までの道の半分くらいまで行った時に、全く荷物を持たないで家を出ていることに気づいてびっくり。結局30分くらい遅刻してしまった。
元町中華街は多分初めて降りた。全然知らない駅の形で、中華街の中に位置する劇場に入る。今日は手伝いの人も多く、ぼくは下北沢でほとんどの面倒な準備を済ませてしまっていたのでほとんど何もすることがなかった。残念なことといえば近くに100円ショップがないことと、手頃なお弁当を買える場所が少ないことくらいだった。とても眠くなったり、急にこうやって日記を書き始めたりする。
そういえばWebサイトにこれまでの日記を全て載せていたけど見れないようにした。これからは更新するタイミングで一番新しい日記だけを一枚貼ることにする。
ほとんど動かずに夜。タイ料理、みんなでたくさん頼んで机にこぼすことを気にせず食べる。英語の会話には参加することができないけれど、意外と聞くことはできるなと思った。朝晩はちゃんと冬の顔をしているし、川も冬の匂いがした。
2024.12.11
よく寝てスッと目が覚めた。朝ごはんにホットドックを食べる。調子が悪い時期に毎日食べていたのでそのことを思い出す味になった。べつに引きずられることはない。ロープワークを2種類覚えた。固く結べてすぐ解けるものと、結んだ後に長さを調整できるもの。つぎ必要になるタイミングまで覚えておくことはできない気がする。腹一杯の中華、八角のきいた担々麺。こんなにもお腹いっぱいなのに110円の魅力に負けて胡麻団子をつい食べてしまう。最近扉を開けたりエレベーターのボタンを押すときに静電気が走る。家の鍵を開ける時、鍵と鍵穴のあいだにほんの少し、とても短く細い、青白い静電気が走るのが見える。身体から漏電しているイメージ。昨日とは打って変わってどんどん働いた。明日終えたら一度家に帰れる。
2024.12.12
『まよかげ/Mayokage』横浜公演の初日、晴れ。朝から何も食べないで会場に向かう。寒さが本格的に冬になった。昼は撮影が入るので今まで感じたことのない緊張感で見守る。英語を喋るチャンスはなかなかうまくいかない。
2024.12.15
『まよかげ/Mayokage』がおわった。終演後片付けも早々に終わらせて橋本さんが出ているスヌーヌー『海まで100年』を見にいった。橋本さんはバストリオの時と変わらず、ちゃんと作品を背負い全てを出しているように見えた。彼女が話し出した時に客席の視線が奪われて、全ての空気を持っていってしまったのをやはり羨ましいと思いながら見ていた。見終えて、YPAMのクロージングパーティー。知らない人もうっすら知っている人もいた。力を抜いて食べて飲み、よくわからない社交に疲れる。なんとなく関わることはないだろうと思っていた人たちが入っているLINEグループになぜか入ってしまい、名前が並んでいるのを見て、ほ〜と思った。自分はこの人たちとは違うなとはっきり思う。電車に長く揺られて、渋谷でもうすこしだけ飲んで解散。おやすみ。
2024.12.18
『まよかげ/Mayokage』の本番が終わってから、バストリオの戯曲の文字起こしが始まって、寝ているか座ってパソコンの前で作業を続けるという日々だった。朝ごはんはちゃんと食べている。目の前に作業が溜まっていると日記を書いたりごはんを作ったり、一度立ち止まってということが難しく、随分とそれに慣れてしまっていてよくない。生活の時間を早いうちに削らないこと。今日は初めて弁護士さんと話して相談をした。こういう体験をできたことはよかったと思うしかないね。
別にこの日に書くことでもないと思うけれど、2024年はとてもボロボロで、何もかも失ってしまったというような気持ちになっていたけれど、ここ二週間くらいで立て続けにいいことがあったり、次のことが決まったり、誘われたりした。これまでしゃがんでいた分のジャンプが一気に来ていて2024年を取り戻そうとしている引力を感じる。でもそれで帳尻が合うわけじゃないぞ、と顔も知らない誰かに唱える自分。
昼はバストリオの顔合わせ。もう見知ったような人たちの知らないこと。眩しくておでこが冷える。
夜はcon-cenの忘年会だった。知らない人の声、意識をぶらさないようにお酒をお腹の手前までで止める力。空腹でお酒を飲んだからか頭がとても痛くなって風呂に入らずに眠ってしまった。
2024.12.19
風呂に入らずに眠って起きた日は身体が重い。風呂に入って、シーツを洗濯に出して、朝ごはんを食べる。ここ数日毎日同じメニューの朝ごはん。この前スーパーと八百屋で買った食材を使うチャンスがなかなか訪れない。今日は4ヶ月ぶりに髪を切った。前髪がずいぶん伸びてここ最近はセンター分けにしていて、前髪どうする?と言われて、似合わないんですよねと答えたら、そうかな?と言いながら前髪を触り、確かにそうだね、と言われた。この美容師さんにはもう4年くらい切ってもらっていて信頼できる。ここ数ヶ月で起きたことを教えて、これからのことを教えてもらった。別に踏み込んで離さないけれどお互いの仕事のフェーズなどについて話し合う関係になったことがとても不思議で楽で嬉しいと思った。結局いつもと似た感じで切ってもらったけど、襟足が綺麗に伸びているのでいつもよりもっといい出来になったと思う。
渋谷へ歩いて向かい、作業するための場所を探していたらどうやら新しくできたドトールを見つけて入る。全部のフロアが綺麗で客席の間隔も広くて嬉しい。渋谷は作業ができる場所が少なかったのでいい発見だった。3時間くらい音楽を聴きながら溜まっていた仕事をさくさく進める。明日の特別講義のための準備、20分の自己紹介をするつもりで資料を作っている。
夜は人生ではじめてのカネコアヤノのライブへ行った。大さん橋ホールのつくりと色の良さ、屋上経由。噂ばかり聞いていて期待感が妙に高まってしまいどうしようと思ってソワソワしていた。始まった瞬間の客席と舞台の不思議な緊張関係、ずっと遠くの方から漏れ聞こえるような声。イリュージョンは起こさない、1200人の視線と、ただ1人、自分がたった1人だったとしても同じように歌っているのではないかと思う小さく強い立ち方。けれど一人ひとり、全方位に届く声の出し方、聞こえてくる声。息を止められた瞬間がいくつも訪れ、身体が動かない気がして何度も足首をぐるぐるしたり背筋を伸ばしたりした。自分にはできないと思ったし、知らない殺し方だとも思って、やはりそれをやりたいと思って自分が舞台上に立つ時のことを少しだけ考えた。
1日に二度目のドトール、夜はコーヒーにすると気分が悪くなりそうだったのでココアにした。冷えた脚は電車に乗ったらすぐに暖かくなった。
2024.12.22
この週末はバストリオ『新しい野良犬/ニューストリートドッグ』のみんなで山中湖まで一泊二日の旅行に行った。こんなに遊ぶように遊ぶのは久しぶりで写真をたくさん撮った。20日の夜、いろいろな話をして心がどうにも落ち着かない気がしたけれど遊ぶのは大事だし、これは全部前向きなことなので途切れることもなく大きな風呂に浮かびながらそのことも考え続けて休んでもいた。気が抜けた身体には風景がすんなりと飛び込んでくることを随分と忘れていた。夜ご飯にいったJIBというカレーハウスのレンダンカレーは辛さの表示を使って脅されたけどとてもとても美味しかった。三角型の看板。深夜まで何度も人狼をやって、ワインをたくさん飲んだ。
山に落ちる影、近づいても近づいても辿り着けない山肌。違う場所を思い出して比較する気温、空気。富士山の麓にある浅間神社で商売繁盛札を買い、おみくじを引いたら大吉だった。普段はいつも神社に結ぶのだけどおみくじの冒頭の詩が気に入ったので持ち帰る。家に帰ったらここ最近買ったお守りなどを整理して年明けに神社に返納しようと思う。後厄の年が終わる。帰りの車の中で、猫は背中から液体を垂らしたように模様が生えるという話を思い出して、違う奴が生まれるときのことを考えていた。自炊をして、M-1を見て盛り上がり、流石に今日は働けないのでせめて残っている作業とスケジュールだけを確認して眠る。
2024.12.27
年の瀬は少しだけバタバタしてしまっている。今日が仕事納めと決めていて、まあ大体終わっているし気持ちも年末なのだけどぽろぽろと残した作業の量を思い出している。
年内最後のバストリオの稽古。次の3月に上演するものに向けてつくった。手元の小さなメモには今野さんが話していた言葉が書いてある。
【点を打つ、水を一滴垂らす、いろんな場所から集まってくる東京という街での記憶】
きっとそういう作品になる。いつの間にか膨れ上がってしまった本棚を眺めながらぱらぱらとページを捲る。
2024.12.29
うだうだ眠ってようやく起き上がる。買うつもりがなかったのに本を買う。『風景の方がこちらを見ているかもしれなかった』、いいタイトルだなと思う。来年もきっとたくさん本を買うと思ったのでポイントカードを作った。売っても買ってもポイントがつくらしい。
忘年会のプレゼント交換に向けて吉祥寺を歩く。ここ最近は引っ越しのこともぼんやりと考え始めていたけど、吉祥寺のお店とか道のことをまだよく知らないなという気持ちになって、来年はもうすこしふらっと遊びに出かける時間を作ろうと思った。あまりにも年末すぎる天気がうれしい。今日の忘年会で予定されているビンゴ大会(全員持ち寄り)景品のために買い物へ、大きな布を買う。
人とお茶をするために渋谷へ。年末の休日の渋谷はまともにまっすぐ歩けない。目当ての店は予想通り大行列、代替の、といってもここもお気に入りの店も大行列、三番目のお気に入りの店の名前をぽろっと言われたので向かう。混雑してるけど空いていた、ラッキー。
とりとめもなく最近の仕事のこと、年末らしい振り返りと抱負の話をする。最後にねじれてしまった関係のことを困ったねと言って、ぼくも困ったねと笑っていた。たぶん上手に笑っていたと思う。
たのんだ珈琲はいつもより苦かった、そういえば一月前にここに来たとき一緒にいた人は泥水みたいな液体と言っていたことを思い出して、舌の上がざらざらしていた。
今年4個目の忘年会のため東向島駅へ。はじめて降りる駅、東東京の雰囲気にほくほくする。ぼくは東側の下町(といってもよく意味は分かってない)の雰囲気がどうにもすきみたい。またそっち側に住むのもいいなと思っている、隅田川も荒川も近いのはさらにポイントが高いし。食べ放題・飲み放題の中華でばくばく食べていっぱい飲んだ。頭が痛くなる手前でやめられて調子がいい。ビンゴ大会をして、なんかみんなそれぞれに似合ったものが渡ったね〜とよろこぶ、4時間はあっという間だった。
2024.12.30
正月は空が白くなる。西荻窪まで歩き、「湯気」のおにぎりが売られていて思わず買う。てのひら食べ物アルバムをつくったらすでに50枚近くあった。テキストも書き始める。急きょ映画を見に行くことにした。下北沢のK2で『SUPER HAPPY FOREVER』。未遂が流れ続ける時間、物語の展開の一歩手前で踏みとどまり続けていた。クラブのシーン、背中のカット。主人公の女の子の振る舞いやおしゃべりはとても現代的なアイコンみたいな要素を感じる、いろんな人の顔に見えた。
池尻大橋の文化浴泉に行き温まる。この銭湯は清潔で、その清潔さの一つはお湯が塩素の匂いがすることにあると思う。皮膚も塩素の匂いに染まる。ミスドを3つかって、蒸籠で野菜とお肉を蒸してささっと晩御飯を食べた。
2024.12.31
大晦日。思ったより寝過ぎた。ミスドの残りを朝ごはんの代わりに、即席サンドイッチを作って食べる。電車に乗り鎌倉へ海を見に行った。風が強すぎて全身で砂を受ける。砂浜が風によって波打ってた。ミルクホールでプリンを食べ、暗くならないうちに電車に乗る。帰りの電車で外を見ると空は黄緑色だった。そばと天ぷらを食べ、日付が変わった頃に眠る。